第九十九章 篠ノ目学園高校 1.蒐一の報告
本章は三話構成になります。
「――え? 蒐、また称号拾ったのかよ?」
呆れたように蒐一に声をかけたのは匠。放課後の教室での事であった。
「うん。『綺麗好きの信徒』と『伝道者の祝福』っていうの」
「……蒐君、今幾つの称号を持ってるか訊いていい?」
「うん。え~と……ひのふの……今回貰ったので十二かな」
「十二……」
「それは……多いわね」
とことん呆れたという表情を隠しもしないβプレイヤーたち。SROは称号を得易いとは言え、十二というのは多いだろう。それも、まだトンの町にいる段階にして。
「……どんだけ蒐が常道を外れたプレイをしてるかが判るな……」
「そうは言うけどな、匠。そこまでバランスブレイカーな称号は貰ってない……筈だぞ? 今回得た称号だって、神から便宜を図ってもらえる確率が少し上がる程度だろうし……」
実際には色々とアレな効果のある称号が揃っているのであるが、それを認めたら何かに負けた気がする蒐一。然したる称号ではないと言い募ろうとしたのだが、
「あら蒐君、少し違うわよ?」
――との要の言葉に機鋒を折られる体となった。
「……違うって……何が?」
「さっき蒐君が言った称号は、どちらも教会組織の好感度に関するもので、運営神の好感度アップではないわよ」
「……違うの?」
『綺麗好きの信徒』の効果は宗教関係者からの好感度上昇である。また、この称号を持っていると教会などの宗教関連施設の清掃を頼まれる事があり、それを引き受けると更に上昇率がアップする。
また、『伝道者の祝福』の効果は、教会から便宜を図ってもらえる確率が少し上がるというものである。
「そうなんだ……」
「違いが解りにくいせいか、混同しているプレイヤーも多いみたいだけど」
大した違いではないようにも思えるが、先々の事を考えると、この場で誤解を解けたのは幸いであろう。蒐一は素直に感謝した。
そして、蒐一から感謝を受けた友人たちも、その蒐一のもたらした情報に――例によって――驚かされる事になる。
「……住人の子供から石の産地を教えてもらうって……」
「そんな告知ルートがあったのかよ……」
「SRO侮りがたしというところかしら。運営側の面目躍如ね」
実際には運営管理室の面々も、錯綜する情報と想定外の展開に右往左往しているだけなのであるが。
「――で、行くのか? 採集キャンプ」
「うん、そのつもりだけど……流れでテムジンさんたちも参加する事になったから、日程とかは少し調整待ちってところかな」
「へぇ……何か大事になってんな」
「ま、僕の方はそんな感じだよ。匠たちの方はどうなのさ?」




