第九十八章 その頃の彼ら 1.「マックス」~お守りクエスト(その1)~
トンの町でシュウイが悪巧みを巡らせている頃、タクマたち「マックス」の面々は、再びヴォークの隠し畑へとやって来ていた。
(「まぁ、ここで網を張るくらいしか思い付かんからな」)
(「下手にコボルトの事を訊き廻ったりしたら、失敗する未来しか見えないよな」)
(「結果、お守りが落ちていた場所で待ち伏せするしか無いという結論になったわけだが……芸が無いと言えば無いよなぁ……」)
(「いいんじゃないか? 仮に他の方法があったとしても、待ち伏せで解決するルートもある筈だ」)
(「ゲーマー的推理乙。問題は、クエストクリアーになるとは限らない――って事だけどな」)
(「大丈夫なんじゃね? 諺にも〝犯人は犯行現場に戻る〟――っていうだろ?」)
(「いや、多分それ諺と違う」)
物陰に隠れ、ついでに気配を遮断する隠蔽系のスキルまで使って待ち構えていると、
(「お……待ち人来たる――かな?」)
(「小さいし、コボルトの子供……かな?」)
(「背が低いのは種族的なものかもしれんしなぁ……。けど、ホシなのは間違いないようだぜ。何かを探してるところを見ると」)
(「問題は、この後どうするかなんだよなぁ……」)
――そう、それが問題であった。
タクマたちとしては、どうにかしてこちらに害意の無い事を伝えた上で、落とし物を返してクエストをクリアーしたいところである。しかし問題は、この状況でいきなり姿を現したりすると……
(「コボルトを狩るために待ち伏せていた――っていう風にしか見えんだろう」)
(「少なくとも、平和的に接触したい者の行動じゃないよな……」)
――然りである。
(「しかし、最初から姿を見せていたら、警戒して近付かなかった可能性もあるだろう」)
(「そうなんだよなぁ……」)
――これまた然りである。
(「今更だけど……結構厄介な状況だよな」)
(「多分だが、ここで姿を見せて声をかけ、その結果ホシに逃げられたとしても――」)
(「ホシって言うなや。犯人みたいに聞こえるじゃねぇか」)
(「そういうつもりではないんだが……続けるぞ。逃げられたとしても、それはそれで一つの結果にはなると思うんだが……」)
(「そういう形でクエが終わっても、高い評価は得られないんじゃないか?」)
(「だよなぁ……」)
こういう状況の下では、タクマたちが取り得る選択肢も多くない。
(「こっそり跡を跟けるか? 多分、コボルトの村の位置は判るぞ?」)
(「そこでコボルトたちに見つけられたら、敵対評価が固まるだろう」)
(「仮に見つけられなかったとしても、どうやって友好的に近付くか――っていう問題はそのまま残るわけだしな」)
(「問題の先送りにしかならんか……」)
もう一つの方策として、仲介者を頼むというのもあるのだが、
(「多分、それをやると評価が下がっちまうな」)
(「評価云々は抜きにしても、現在の状況には間に合わんだろう」)
(「だよなぁ……後日、村を訪れるっていう選択肢もあるが……」)
(「跡を跟ける時に見破られたら、村自体がドロンしちまう可能性だってあるし、そうでなくても敵対的な態度を取られる可能性がある。その場合……」)
(「あぁ、こっちの不始末に巻き込んじまう事になるからな。それは避けたい」)
――という、彼らなりの判断からこれは没となった。




