第九十七章 トンの町 6.エンジュ~降って湧いた試煉~(その3)
――ここまで来れば二人にも話のオチは見える。
「つまり、危険な場所なんですよね?」
「……そう難しく考える事は無いんじゃない? 南のフィールドだって、子供たちには危険じゃん?」
「そうですね。北や東のフィールドも同じように危険ですよね?」
確かに、セーフティゾーンたる町から出るとなれば、多少の危険は付きものだろう。それは解る。
しかし、宝石職人たる自分が、町の外に出る機会などそうそう……
「原石が手に入らないんなら、自分で採りに行くしか無いじゃん?」
――正論である。
「いつも同行者がいるとは限らないんだから、ソロでも或る程度の作業はできるようになっておかないとだろ?」
――腹が立つほど正論である。
エンジュとて、それが正論だと認めるに吝かではない。ないのだが、ゲームとは言え命を賭けてまでやる事でも……
「そんなに心配しなくても大丈夫だって。別にピッケルとスコップで、モンスターと渡り合えって言ったりしないから……スコップは実際に武器としても優秀らしいけど……」
「あ、あの! だったら何を!?」
これ以上シュウイに考えさせては、スコップ戦闘の特訓などが追加されかねないと、慌てたエンジュが質問を覆い被せる。
「――ん? あぁ、周辺を【警戒】しながら採掘する訓練かな? あと、採掘中にモンスターが現れた場合、即座に【隠蔽】を発動できるようになる事。それと……エンジュは襲撃の度に目を瞑る癖を、どうにかしないとね」
「あ……あはは……」
大量のモンスターを捌いていながら、ちゃんとエンジュの様子にも目を配っていたらしい。
「実際の採掘作業中に使えなきゃ駄目じゃん、【隠蔽】」
「は、はぃ……」
「大丈夫、死に戻るような事はさせないから♪」
「はいぃっ!?」
不吉な台詞で暗に特訓を示唆するシュウイ。……なぜか隣でモックが黒い笑みを浮かべているのが気になるが……
「あ――そ、そうだ。先輩にお話ししておかなきゃならない事が」
「ん? 何?」
楽しげに特訓内容を考えているらしきシュウイの様子に、少しでもその気を逸らせないかと足掻いていたエンジュ。タイミング好く思い出したのは……
「……狩りに同行したい? レベルアップの目的で?」
他ならぬ瑞葉からの依頼の事であった。
「……二人がいいんなら、僕としては構わないけど……いつ?」
「あ、いつでもいいそうです。早ければ早いほど助かるって言ってました」
「あ……じゃあ、明日にでも」
「解りました。伝えておきますね」
モックとエンジュから話を聞いたシュウイは、内心で首を傾げつつも、瑞葉からの依頼を了承したのであった。
――合掌。




