表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/917

第九十六章 運営管理室 2.謝罪案件顛末

「素材ぐらいか?」

「そうなるんだが……」



 散々に稀少素材を乱獲しているシュウイに、今更与えられる素材など無い。



「いや……動物性の素材じゃなくて、鉱物性の素材ならどうだ?」

「確かにそれなら、拾う機会も無いし喜ばれるかもしれんが……今は時期が悪いだろう」

「……あ……領主のクエストの真っ最中か……」

()りにも()って、アクセの素材なんてものを発注しやがったからな……偶然だとは思うが……」



 タイミングが好いのか悪いのか、目下シュウイは領主からの素材調達クエストの真っ最中である。このタイミングでアクセ用の鉱物素材など渡した日には、優遇措置が過ぎると非を鳴らされる事は間違い無い。



「いや……(そもそも)、彼に稀少素材を与えるのは(まず)いという話じゃなかったか?」

「あぁ。そのために態々(わざわざ)【調薬】や【錬金術】のスキルを与えた訳だからな」

「その配慮をひっくり返してくれたがな……」



 稀少素材が王都の錬金術師(NPC)に流れるのを(はば)まんものと、少しでも素材を自家消費させるべく【調薬】と【錬金術】のスキルを与えたのであるが……シュウイはそれをあっさり邪道アーツで上書きしてのけたのである。結果、レシピを得るのが困難になり、素材を自家消費させるという運営側の(もく)論見(ろみ)は不首尾に終わったのであった。



「いや待て……邪道スキルで思い出したが、そのレシピを与えるというのは駄目なのか?」

「レシピ……【錬金術(邪道)】とかのか?」

「あぁ。(わた)()の仕込みのせいでレシピが手に入りにくくなっているようだが、レシピそのものは確認できているんだろう? それをこっちから渡すというのは駄目なのか?」

「むぅ……」

「確かに、レシピの幾つかはこちらでも確認しているが……」

「だが、そのレシピが彼のレベルに合ったものでなければ役立たずだろう?」

「それのどこが悪い? ()ぐに使えるものでなくとも、レシピを入手して悪い事は無いだろう?」

「それはそうかもしれんが……」



 スタッフたちが考え込んだところで、今度は一部のスタッフから異議が呈される。



(そもそも)、これは彼に対する謝罪の(しるし)をどうするかという話だろう。こっちの都合だけで、役にも立たんものを押し付けるのはどうなんだ?」

「そうだな。こちらの誠意を問われるぞ」

建前(たてまえ)はそのとおりだが……下手に〝役立つ〟ものを与えると、その他大勢の一般プレイヤーを巻き込みかねんのでは?」

「その場合最大の被害者は、多分俺たちなんだよなぁ……」



 どうしたものかという雰囲気になるが結局は、そこまで特定のプレイヤーの事情に踏み込んでいいものかという話になる。優遇措置が過ぎるとして、漏れ聞いた他のプレイヤーが不公平感を抱くのではないか? それは何よりも避けるべきだろう。



「……八方(ふさ)がりだな……」



 一同(さじ)を投げかけたところで、



「あのぉ~……いいですかぁ?」



 ――リアル世界における「トリックスター」が声を上げた。



「……一言(ひとこと)……何か案があるのか?」

「案っていうほどでもないんですけどぉ……シュウイ君にノーマルスキルを与えるというのは駄目なんですかぁ?」

「ノーマルスキル?」

「そう言えば……彼の場合、入手しにくいのは(むし)ろノンレアスキルなんだよな……盲点になってた……」

「無難なノーマルスキルを与える事で、物騒なレアスキルの使用頻度を下げられるかもしれんぞ?」

「いや待て。こう言っては何だが……彼が面倒を引き起こすのは、必ずしもスキルのせいとは言えんだろう」

「それに――だ、仮にノーマルスキルを与えたところで、レアスキルを拾う確率が下がる訳ではないだろう」

「……だな。拾った以上、彼はそのスキルを使う筈だ。彼にそれ以外の選択肢は無い」

「待て待て、論点がすり替わっているぞ。問題は――彼にノンレアスキルを与えて不都合が有るか無いかだろう」

「……無い……な……」



 事ここに至って、一同の顔が(にわか)に明るいものとなる。今後シュウイにはノンレアスキルを与えるという方針が確定したのだ。これを慶事と言わずして、何を慶事と言うのだ。(あに)喜ばざるべけんや――である。



「だとして、何のスキルを贈る?」

()(かつ)なものを贈ると、彼の場合バランスブレイカーになりかねないからなぁ……」

「心得スキルのセットはどうだ? 初心者向けのスキル群だが、セットで持っている者はほとんどいないだろう」

「……良いかもしれん。心得スキルなら与える影響は小さいだろうし、役にも立つ。セットで与えるというのであれば、充分に詫びの(しるし)になるだろう」

「【採集の心得】に【採掘の心得】……【樹医の心得】なんてのもあったな」

「【暗器の心得】……は(まず)そうだな……止めておこう……」

(そもそも)、彼は【暗器術 初級】を持ってるだろう」

「……そうだったな……」

「だったら、【動物知識】や【植物知識】、【鉱物知識】とかはどうですか?」

「待て待て。何も一度に渡す事は無い。これからの事も考えんとな」



 ――という一幕があって、シュウイには【採集の心得】と【採掘の心得】、【野営の心得】のセットが贈られたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 謝罪の気持ちないよね
[一言] ねえ、運営管理室の皆様 謝罪する気あるの? ちゃんと仕事しなよ。
[良い点] 運営無能では?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ