表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
416/887

第九十五章 篠ノ目学園高校 6.放課後~匠@ファミリーレストラン「ファミリア」~

 ややあって気を取り直した(しゅう)(いち)は、(おもむろ)に幼馴染みたちの方に向き直る。



「ん~……じゃあ、今度はそっちの状況を教えてよ」



 自分の活動内容を根掘り葉掘り訊かれたのだ。今度はそっちの状況を訊かせてもらわないと、不公平というものだ。そう思って問いかけた(しゅう)(いち)であったが、



「あ~…俺たちの方は……何と言うか、ちょっとややこしそうなクエに引っかかっててな」

「ややこしそうなクエスト?」

「また秘密クエストなのかしら?」

「いや……多分そういうんじゃないと思うが……いやまぁ、或る意味で秘密クエなのか?」



 (たくみ)は独り首を(かし)げているが、(しゅう)(いち)にしてもコメントのしようが無い。一体どんなクエストに巻き込まれた?



「いや……『コボルトのお守り』ってクエストなんだけどな。知ってるか?」

「知らない!」

「聞いた事が無いわね」

「僕が知ってる訳無いだろ?」

「そうか……」



 軽く溜め息を()くと、(たくみ)(くだん)のクエストの内容を報告していく。ヴォークは確かに生えていたし、実を着けていたのも確かなようだが、どうもそれは何者かが密かに世話しているものらしい。勝手に採集した日には、その何者かと一悶着起きる可能性も捨てきれない。(みんな)も気をつけた方が良いだろう――というところから始まって、落とし物らしきお守りを拾った(くだり)まで。



「――てか、(しゅう)には実物を送ったろ?」

「あ、やっぱりあれがそうなんだ」

「おぅ。でな、(しゅう)。お前、以前にコボルトに出会ったとか言ってたよな?」

「シルを貰った時の事? ……確かに、出会ったと言えばそうなんだけど……」



 関所を守っていたコボルトたちを【腋臭(わきが)】の悪臭で追い払ったのを、〝出会った〟と言っていいものか? 交渉らしい事は何一つ行なっていない。……帰る時には手を振ってくれたが……コボルトたちの腰が引けてたような気もするし……



「……って事は、コボルトの情報はほとんど無しか」



 今回ガックリきているのは(たくみ)の方だった。それを見ている(しゅう)(いち)にしても、「遊び人」のスキルについての情報が手に入らなかった事でついさっき失望を感じたばかりなので、何か(たくみ)のガッカリに責任があるような気がして落ち着かない。

 そんな微妙な気分を吹き払うように、



「……コボルトの事なら、冒険者ギルドの職員(NPC)に訊いた方が早いかもしれないわね。少なくとも、イーファンの冒険者ギルドの職員(NPC)は、コボルトの事を知ってたわよ?」

「あ……」

「……そう言えばあったね。そんな話」



 確か、コボルトやホビンたちが時々、冒険者ギルドに素材とかを持ち込むという話だった。冒険者登録はしていないそうだが。



「マジかぁ……でもなぁ、あまり大っぴらに訊くのも(まず)そうな気がするんだよなぁ……」

「そう言えば……ヴォークの実の事は知られていないとか言ってたわね」

「あぁ。知られてないって事は、こっそり世話をしてるって事だろ? (おもて)沙汰(ざた)にしちゃ(まず)いような気がするんだよな」

「あ~……確かに……」



 自分(シュウイ)なら【嗅覚強化】で臭跡を追えるのではないかとも思うが、(タクマ)たちのクエストに乱入する訳にもいかないだろう。

 では、「マックス」の面々にできそうな方法と言えば……



「……それとなくギルドの職員(NPC)に訊くのが一番じゃないかしら」

「あとはアレだな。(たくみ)のところの魔術師さんの従魔、確かフクロウだったよな。ドローンみたいに空から捜索――とか、してくれないのか?」

「あ~……判んね。今日にでもマギルに訊いてみるわ」



 (しゅう)(いち)(たくみ)がそんな事を話している傍らで、(かなめ)は何やら考え込んでいたが、



「……少し考えてみたんだけど……そのお守りって、落とし物だったのよね? だったら、落とし主が探しに来るんじゃないかしら。……だとしたら、下手に動かない方が良いかもしれないわね」



 ――と、言い出した。



「あ~……俺たちの中でもそんな意見はあったんだが……(かなめ)もそう思うか?」

「ゲームとして考えてみた場合はね。冒険者ギルドの職員(NPC)がコボルトの事を知ってるかどうかなんて……そんな細かな情報を、クエストの要因に持ち込むとは思えないのよね。だとしたら、現場で手に入る情報を優先した方が、間違いが無いような気がするのよ」

「あ~……だったら、その線で押してみるか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ