第九十五章 篠ノ目学園高校 4.放課後~蒐一@ファミリーレストラン「ファミリア」(その3)~
先にネタを割ってしまうと、『深淵の胃袋』の効果は食べ過ぎによるバッドステータスの回避であり、『ヤマタノヲロチ』の効果は酒の飲み過ぎによるバッドステータスの回避である。
ただしこれらのバッドステータスは、どちらも満腹度とともに次回のアップデートで実装の予定であるため、現時点ではその効果を発揮できない。ゆえに空欄になっているのだが……
「……これも【大食い】と同じって訳か?」
「多分、満腹度の実装後に発揮されるんでしょうね。……という事は、効果もそっち関連という事になりそうね」
「食べ過ぎ飲み過ぎを防ぐのかなぁ?」
「多分、茜の言うとおりだろうな」
――と、あっさりと看破されるのであった。
……だが、それは即座に新たな疑問へと繋がる。いや……少し前の疑問の蒸し返しと言うか……
「……これって、さっきの【大食い】と同じ話だよな? 何の効果も無い称号を、何でこのタイミングで拾うんだ?」
「……蒐君の説では、【大食い】は称号を取得させるためのトリガーだったという話だったわよね? それに倣うと……?」
「ねぇねぇ蒐君、また何か拾ったの?」
疑わしげな三対六個の目に見つめられた蒐一が、観念したように口を開く。
「拾ったって言うか……『遊び人』に就職しちゃったよ」
「「「――は?」」」
訳が解らないという顔付きの三人を見て、あぁ、やっぱり珍しい事なのか――と、認識を新たにする蒐一。称号掲示板に報告した時の荒れっぷりから薄々察してはいたのだが。
その後の三人の反応は、掲示板での反応をそっくりそのまま踏襲していた。
「選りに選って『遊び人』かよ……」
「ナントさんに聞いたけど、結構な地雷職なんだって?」
「あぁ、結構どころじゃないな」
「うん!」
「そうね……」
匠の台詞を微妙な表情で肯定する女子二人。その様子を見た蒐一は、これはできるだけ早く情報を入手しないと、後々痛い目を見そうだと判断する。
「でさぁ、ものは相談なんだけど、『遊び人』について知ってる事を教えてくんないかな?」
蒐一としては妥当な要求のつもりであったが、幼馴染みたちは複雑な表情で顔を見合わせると、
「あ~……その、なんだ……蒐……」
「ごめんなさいね蒐君、私たちも『遊び人』の事はあまり知らないのよ」
「一般知識だけ!」
「へ? 全員βテスターじゃん? そこからの情報とか無いの?」
「βテストん時は無かったんだよ、『遊び人』」
「だから誰もやってないの!」
「正確には、βテストに調整が間に合わなかったみたいね。あれは全ての職業とスキルに影響を及ぼす、謂わばジョーカージョブだから」
職業に影響するとはどういう事かと問い質すと、どうやら――仮令サブジョブとしてでも――「遊び人」を持っていると、転職時に提示される職業リストに妙な職が追加される事があるらしい。普通では就けない職に転職できる事を期待して、敢えて「遊び人」を狙うプレイヤーもいるらしい。
「うわぁ……ナントさんが知り合いの『遊び人』に話を訊いてくれるって言ってたけど……それを待った方が良いかな……?」
「あら、だったらそっちを頼った方が確実ね。『遊び人』に関しては情報も少なくて、他のゲームから類推した情報が出廻ってるのが現状だし」
「そっか……だったらさぁ、【暴発】【ファンブル】【遊興術 初級】ってスキルについてだけでも判んないかな。『遊び人』絡みのスキルだと思うんだけど、ナントさんも詳しい事を知らなくて……取説を読もうにも、試してみるのすら怖いんだよね……」




