第九十五章 篠ノ目学園高校 3.放課後~蒐一@ファミリーレストラン「ファミリア」(その2)~
「「「称号!?」」」
愛も変わらずの蒐一爆弾に、揃って頓狂な声を上げる三人。これだから蒐一からは目が離せないんだ。
「称号ってお前……一体何やった!?」
「待って! ……蒐君、称号の話も気になるけど、抑〝パーティ〟って何かしら?」
蒐一の話は念入りに聞いておかないと、どこにどういう爆弾案件が転がっているか判らない。これまでの経験で学習していればこそ、要は敢えて遠廻りをしてでも、遺漏無く情報を回収していくつもりであった。
「あ~……順番に話すよ」
・・・・・・・・
「成る程……領主の謁見クエストかぁ……」
「掲示板でも報告されていたわね」
腑に落ちたという表情の幼馴染みたちに、蒐一は疑問を投げかける。
「みんなは請けなかったんだ? このクエ」
「あ~……俺たちはさっさとナンの町に行っちまったからなぁ……トンの町に居残る理由も無かったし」
「ナンの町でも、特にそれらしいトリガーには出会わなかったものね」
幼馴染みたちの話しぶりから、どうやらナント以上の情報は持ってなさそうだと察する蒐一。なら、さっさと――蒐一にとっての――本題に入っておこう。
「……でさぁ、領主様からアクセの素材を頼まれたんだけど、何か知らない?」
皆は称号の事を訊きたいようだが、蒐一にとってはこちらの方が重要だ。
「アクセの素材?」
「そりゃまた……俺たち『マックス』にゃ縁の無い話題だな」
「じゃあ、二人は何か聞いてない?」
「う~ん……あたし知らない。要ちゃんは?」
「……普通のアクセサリーの事までは気が回らなかったわね……魔道具とか護符としてのアクセサリーについてでいいかしら?」
「うん、充分」
「それじゃ……アクセサリーの素材として多いのは、これは勿論宝石ね。それ以外だと、モンスターの爪とか牙、骨なんかの素材もあったわね」
〝牙〟の辺りで匠がピクリと身動ぎした。
目敏くもそれに気付いた要であったが、追及は後に廻そうと、心の手帳に書き留める。
「……ゲームの中では見た事が無いけど、他に木彫りや貝殻、ガラス……焼き物なんかも使われている筈よ。残念ながら、どこで採れるとかの情報は調べた事は無いわ。……こんなところでいいかしら?」
「うん、充分だよ」
採集場所の情報が得られなかったのは残念だが、何を探せばいいのかが判っただけでも有り難い。領主があんな事を言ってくる以上、どこかに手懸かりはある筈だ。住人に訊けば判るのではないか?
「じゃあ……お待ちかねの称号の話だけど……僕が拾った称号は二つ。『深淵の胃袋』と『ヤマタノヲロチ』だよ」
「……聞いた事が無い称号ね? 二人はどう?」
「知らない!」
「俺も聞いた事が無いな」
この件については既に――ナントに言われて――掲示板に報告しているのだが、どうやら要も見落としていたようだ。〝上手の手から水が漏る〟というやつか。
「んで、蒐。その称号って、どんな効果があるんだ? ……あ、言いたくないなら訊かないけど……」
当たり前のように質問した匠であったが、さすがに横柄だと考え直したのか、慌てた様子で付け加える。
その様子を苦笑しつつ見ていた蒐一は、改めて困った表情を浮かべる。
「別に言いたくない訳じゃないけど、答えられないんだ。……って言うか、説明文が空欄なんだよ」
「「「――は?」」」




