第九十四章 その頃の彼ら 11.三人寄れば……?
「あれ? 瑞葉さん?」
「あ、お久しぶりです」
対人恐怖症一歩手前の瑞葉に、親しげに声をかけてきた二人のプレイヤー。そして……
「あ……モック君にエンジュちゃん。こ、こんにちは」
そんな二人に――ややぎごちないものの――卒無く挨拶を返す瑞葉。親が見たら感涙を通り越して驚倒したであろう。
意外に思える組み合わせであるが、実は彼らの仲を取り持ったのが住人であったと聞けば、ははぁと思われる向きもいるであろう。シュウイが引き廻した事で住人の間に知己を得た新人二人と、極度の人見知りのため住人としか会話できない引き籠もり。成る程、住人ぐらいしか共通点は見つかりそうにない。
では、具体的にどんな経緯があったのかというと……一言で云うと、瑞葉の引き籠もりを心配した住人たちが、顔見知りの異邦人、すなわちモックとエンジュの二人に引き合わせたのがきっかけなのであった。
〝ちったぁ異邦人同士の付き合いってものも大事にしろ〟――などと言われて、おっかなびっくり二人に向き合った瑞葉であったが……
〝この子はNPC、この子はNPC……〟などと、必死の形相で呪文のように繰り返して自己暗示をしているのを見た新人二人が、呆れつつも気の毒がって、適度な距離を取りつつ自己紹介した事で、瑞葉の恐怖心も大分薄れたようであった。
駄目押しになったのが、話題に困ったエンジュがふと姉の名前を出したところ、エンジュがリアルで要の知り合いらしいと知って、一気に警戒心が薄れたのであった。……実際には、エンジュが直に要と会ったのは一、二回だけなのだが、そんな事を馬鹿正直に言うほどエンジュもKYではない。
ともかく、そんな感じで彼ら三人は友誼を温めるに至ったのであった。
ちなみに瑞葉と話しているうちに、彼女の対人恐怖に拍車をかけたのがシュウイらしいと気が付いたが、それについては二人とも黙りを――シュウイに対しても――決め込む事にしたようだ。
さて、そんな二人と出会った瑞葉は、単にふとした思い付きから、自分が陥っている窮状について二人に相談してみる事にした。
「レベルアップの近道ですか?」
「う、うん……近道じゃなくてもいいんだけど……何か良い方法を知らないかな?」
自分の境遇を知っているこの二人なら、何か良い知恵を授けてくれるのではないか? そんな考えから、それこそ藁にも縋るつもりで相談してみたのだが……
「……ま、まぁ……無いとは言いませんけど……」
「正直、あまりお薦めできないっていうか……」
言うまでもなく二人が考えているのは、シュウイの狩りに同行する事である。嘗て自分たちのレベルを半日で1上げた実績があるのだから、有効なのは間違い無い。ただし問題は……
「えーと……瑞葉さんの対人恐怖……人見知りには、多分ですが最悪の人選になると思います。あ、いえ、悪い人ではないんですけど……」
「ただ、その……スパルタと言うか、苛烈と言うか、容赦が無いと言うか……」
「それ相応の……いえ……それ以上の覚悟が無いと、お薦めできませんね」
「〝良薬口に苦し〟って言いますけど……あれは劇薬と言うか……」
「どっちかと言うと、〝毒をもって毒を制する〟――って感じですもんねぇ……」
口々に述べる二人の様子を見て、どうやらその方法というのは、一筋縄ではいかない荒業らしいと察する瑞葉。しかし――だがしかし、今は非常事態である。首尾好く園芸職に転職できるかどうか、この先ゲームを続けていけるかどうかの瀬戸際と言っても過言ではない。ここは清水の舞台から飛び降りるつもりで、彼らの言うキーパーソンに引き合わせてもらうべきではないのか?
「……お……お願いできる……?」
「……え……?」
「だ、大丈夫なんですか?」
「う、うん……い、一世一代の覚悟を決めたわ」
「そ、そうですか……」
「だったら、一応先輩に話を通してみますね?」
「う……うん、お願い」
――これがどういう結果に転ぶか、誰一人として予想できないのであった。




