第九十四章 その頃の彼ら 4.「ワイルドフラワー」~これまでの経緯(その2)~
従魔探しが空振りに終わった翌日、不発のまま宙ぶらりんになっているクエストも気になるし、使役職らしい住人のいた家を再訪してみよう、そのついでにモンスも探してみよう――と、行動を起こした「ワイルドフラワー」であったが……
(「うわぁ……またあの婆ちゃんかよ……」)
(「今回もぎっくり腰?」)
(「そういう設定みたいね」)
(「山径を歩く者の前に現れ、同じ頼みをしてくるキャラクター……」)
(「地縛霊?」)
(「いや……前回と場所は違うから……って、そうじゃない」)
(「典型的なトリガーキャラよね。クエストの」)
(「あれか? 某ゲームで〝あぁ困った事になった。どこかに勇敢な者はいないものか〟って言ってるような?」)
(「……まぁ、そうなんだけど……あたしは妖怪っぽいって言いたかったんだけど……産女とか……」)
微妙な雰囲気になりはしたが、こうしていても埒が明かないと判断したカナが、〝山径でぎっくり腰を発症して難儀している〟という体の老婆を助けるべく進み出る。ここまでは前回とほぼ同じ展開であったが……前回と大きく違う点が一つあった。
目を大きく見開いた老婆が、その「一つの相違点」を凝視する。――当然のような顔をして主に蹤き従うサンチェスを。
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「あたしゃとうとうお迎えが来たのかと思ったよ」
半ば魂が抜けたような声で喋る老婆を背負って歩くのはサンチェス。端から見れば大概にシュールな光景であるが、要は〝か弱き女性である主に力仕事を押し付ける訳にはいかぬ〟――と、サンチェスが老婆の運搬を買って出たのである。……当の老婆は腰が引けていたが。
通常はパーティの先頭で露払いと警戒役を兼ねているサンチェスがこの有様なので、今はスーちゃんを抱えたセンが警戒役を代行している。
老婆の――サンチェスの背中からの――道案内に従って、「ワイルドフラワー」の面々が辿り着いたのは、前回と同じ一軒家であった。
(「……これって前と同じ家だよね?」)
(「ここまでの流れは前回と同じみたいね」)
(「……絵面は結構違うけどね……」)
(「……誤差の範囲よ。問題無いわ」)
(「そうかなぁ……」)
多少の誤差はあったものの、基本的には前回と同じように話が進む。老婆の家で孫という女性に紹介されたのも、その女性が従魔術師であったのも前回と同じ。前回はこの後で、《条件を満たしていません。サブルートに入ります》というメッセージウィンドウが現れたのだが……
「あら、貴女たちも使役職なのかしら?」
――と、件の女性従魔術師が話しかけてきた。前回とは異なる展開である。
まぁ尤も、前回と違ってスケルトンとスライムを引き連れている上に、スケルトンなどは派手派手しい衣装を纏って、しかも彼女の祖母を背負っての登場である。使役獣なのは見間違えようが無い。
ちなみに、ここまで老婆も孫の女性も、以前に「ワイルドフラワー」に会った事など忘れたかのような振る舞いをしてた。前回のクエストが不発となったためなのか、それとも、彼女たちは単なるトリガーNPCで、そこまでの性能は与えられていないのかもしれない。
「えぇ。と言っても、現在従者を得ているのは私たちだけですけど」
「ふぅん?」
従魔術師の女性は値踏みするような目でカナとセンを、ついでにサンチェスとスーちゃんを眺めていたが、
「……だったら、一つ頼まれてくれないかしら?」
――と、切り出した。




