第九十四章 その頃の彼ら 2.「マックス」~誰かの落とし物~
「……〝誰か〟が〝こっそり〟……か」
問題となりそうなポイントを繰り返す魔術師マギル。その頭上ではフクロウのルヴァが小首を傾げている。
「……これがクエストだとすると、結構微妙な立ち廻りが要求されるんじゃないか?」
「あぁ……確かに。〝誰か〟を捜すだけなら何とかなるだろうが……」
鳴り物入りで探し廻った場合、〝こっそり〟というポイントに抵触する懸念がある。そうなるとクエストは失敗扱いになりかねない。
「……ともかく何か手懸かりを探そう。これがクエストなら、何か手懸かりが残してある筈だ」
「メタな解説乙。だが、現在採れる最善手だな」
「あぁ、幸か不幸か辺りに人影は無し。〝こっそり〟という条件はクリアできるだろう」
手分けして捜索に当たる一同。暫くしてそれを見つけたのはリーダーのサントであった。
「おい! これが手懸かりってやつじゃないか!?」
声を上げて仲間を呼び集めるが、不用意にその「手懸かり」を拾い上げるような真似はしない。まずは現状のまま確認してからだ。
「……ふむ。【鑑定】してみたが、危険なものではないようだ。『お守り』とだけ表示されている」
「お守り? それだけか?」
「あぁ。それ以外何も表示されない」
「マギルの【鑑定】で情報がそれしか出ないってのは、却って怪しいだろ?」
「と、なると……これはやっぱりクエストのキー・アイテムか」
「何かの条件を満たさないと、これ以上進めないんだろうな」
他に手懸かりらしきものは無いようだし、ここでこれ以上やれる事は無いか。
手詰まりか――と、なりかけたところで、
「……いや……おぃ、これちょっと知り合いに見てもらいたいんだが……駄目か?」
「知り合いに?」
「あぁ、秘密クエだって言えば、それ以上追及しないと思う」
「そりゃいいが……何か当てがあるのかよ?」
「あぁ。そいつな、【鑑定】の上位スキルっぽいのを持ってるんだわ」
「「「「「【鑑定】の上位スキル!?」」」」」
聞き逃せない事を聞いたと、一同が思わず声を上げた。単なるレベルアップではないというのか?
「それって【看破】の事か?」
「いや。【看破】は【鑑定】とは別系統のスキルの筈だ」
困惑の声が上がるが、【看破】は【鑑定】とは別物のスキルである。
【看破】は隠蔽・偽装・詐称などで隠された不自然な箇所を見破る準レアスキルで、【鑑定】のような事はできない。しばしば【鑑定】の上位スキルと間違われるが、別系統のスキルなので、幾ら【鑑定】を育てても、【看破】には進化しない。
ちなみに、レッドネームプレイヤーに三回殺されると取得可能になる。
「いや、【看破】じゃなくて別物だ。……詳しくは言えないけどな」
「……解った。素より個人のスキルを詮索するのはマナー違反だ。他に代案が無いようなら、自分としては構わないが?」
「……だな」
「この際だ、タクマの知り合いに賭けてみるか」
「んじゃ、事情を添えて現物を送るわ」
……もうお解りだろうが、タクマが当てにしているのは、シュウイの【鑑定EX】である。
本来なら、このお守りを然るべき住人に見せる事で、所有者についての情報を得る事ができるのだが……タクマはシュウイの【鑑定EX】に頼る事を思い付き、パーティメンバーもそれを承認した。
それが吉と出るのか凶と出るのかは判らないが……ややあって、シュウイからお守りが返送されて来る。
――鑑定結果のハードコピーとともに。
「……コボルトのお守り……?」
《コボルトのお守り。老コボルトの牙でできており、小さな同族に降りかかる危難を打ち払う》
そして……彼らの眼前に浮かぶウィンドウが、クエストの開始を告げていた。
《クエスト「コボルトのお守り」が発生しました。クエストを受けますか? Y/N》




