第九十四章 その頃の彼ら 1.「マックス」~ヴォークの実を求めて~
シュウイが領主への謁見クエストをこなしている頃、タクマたちは何をしていたかと言うと……
「それっぽい話は出てこなかったのか?」
「あぁ。お前らがログインできなかった間に、手分けして訊き込みをかけてみたんだがな」
追捕クエストの最中に、思わせぶりに登場した「ヴォークの実」というワード。これに何かの意味があるのではないかと考えた「マックス」の面々は、タクマたち学生組が試験のためログインできない期間を活用して、アルファンの宿場の住人を相手に情報を集めていたのだが……その結果は思わしいものではなかったのである。
「んじゃ、このネタは外れだってのか?」
「それがなぁ……」
「必ずしもそうとばかりは言えないみたいでな」
ヴォークの実を採った、或いは見たという住人こそ見つからなかったのだが、
「噂だけは昔からあるみたいなんだよな」
「そう、どこか近くで採れるっていう――な」
「あと、あるとしたらこの辺りだろうって場所も教えてもらったんだがな」
成る程。これは中々悩ましい話だ。具体的な証拠も証言も得られない代わりに、その存在を示唆する根拠は、不確かとは言え幾つか存在している。
「……実際に行ってみろって事か?」
「何となくだが、そういう気がするんだよな……」
・・・・・・・・
迷っている暇があるのなら、さっさと現場へ行ってみた方がましだろう。諺にも「現場百遍」というではないか。
「いや……諺とは少し違うんじゃないか?」
――という意見もあったが、取り敢えず現場へ赴くという方針自体は賛同を得て、「マックス」の面々は候補地として教えられた場所に足を運んだ。
そこで彼らが見たものは……
「これがヴォーク? 確かなのかよ?」
「【鑑定】でもそう出てるんだし、間違いは無いだろう」
「けどよ、実なんて一個も無ぇぞ?」
「時期が違うんじゃないか?」
当てが外れたという思いが広がる中、
「……いや……待て。……どうもこのヴォーク、実を収穫されたばかりのようだぞ……?」
――という指摘があった事から事態は一転する。
何より、それまで単にヴォークとしか表示されなかった鑑定結果が、「収穫後のヴォーク」と表示されるようになったのだ。
「……これは、クエストの始まりってやつか?」
「それにしちゃウィンドウが表示されないぞ?」
「いや、SROだと、クエストの開始が明示されるとは限らんだろう」
「それはそうだが……このクエストの場合、開始を秘匿する必要があるのか?」
「寧ろ……まだクエストの開始には至っていない……という可能性もあるな」
「トリガーが足りてないって訳か?」
メンバーたちは蚤取り眼で辺りを見廻していたが……職業柄と言うのか、それに気が付いたのは斥候役の獣人パリスであった。
「おぃ……気のせいかもしれんが……この辺りって何だかサッパリしてねぇか?」
「サッパリ?」
「そう言えば……ヴォークと競合しそうな草木が少ないような……」
「……伐ってある――という事か?」
「剪定の痕跡っぽいのもあるな……」
「けど……足跡とかは残ってないぜ?」
「いや……あそこ、判るか? 枝を落としたらしい痕がある。……仮に枝があったら、丁度ヴォークへの陽射しを遮っていたような位置取りだな」
「てぇと……誰かがこっそり世話をしてるって事になんのか?」
ポツンと呟いた斥候役のバリスの言葉に、暫し押し黙る「マックス」一同。
やや間を置いて――




