表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
399/919

第九十三章 運営管理室(その2)

「……いや、待て。【福笑い】は確かに幸運値に影響するスキルだが、それは笑っている時限定の筈だ。『遊び人』の効果に影響する程とは思えないが?」

「いえ、彼は【トリックスター】の取得に伴い、初期ステータス値が軒並み五割増しになっています。幸運値(LUC)も当然五割増しです」

「それはそうだが……」



 (たい)()との()()りの中で、木檜(こぐれ)は小さな違和感を感じていた。何か見落としがあるのではないか? (たい)()もそれは同じだったと見えて、中嶌(なかじま)に指示してシュウイのステータス画面を表示させていたが、特に変わった事は(・・・・・・・・)見られなかった(・・・・・・・)


 ただ……中嶌(なかじま)は何かに気付いたようだ。



「……幸運値(LUC)……」

「うん?」

「どうかしたか? 中嶌(なかじま)

「いえ……木檜(こぐれ)さんの『神に見込まれし者』称号ですけど……補正効果は表示されないんですか?」

「補正?」

「アレはそもそもクエストの期間中だけで……あ……」

「……このプレイヤー……確かクエストを遂行中だったよな……」



 おかしな点に気が付いて、スタッフたちの顔が強ばる。

 『神に見込まれし者』称号は(きゅう)(きょ)設計されたものであったため、幸運値への補正効果がステータス画面の表示に反映されないという不具合があったらしい。

 それがどういう事かというと……極めて重要な問題点に、今の今まで気付かなかったという事である。


 「問題点」の意味するところを理解して、一気に(あお)()めるスタッフたち。


 『神に見込まれし者』称号は、クエストの期間中に限り幸運値を10ほど底上げする効果がある。クエストが終了すれば底上げ効果も終了するのであるが……



「……幾つ(・・)だ……?」



 問題は、現在シュウイが複数のクエストを遂行中だという事である。

 つい先頃に発展的に終了したズートの種蒔きクエストを別にしても、



「えーと、確か……新人指導クエスト及びその派生クエスト、ズートの苗の育成クエスト、教会の模様替えクエスト、それに領主からの納品依頼クエスト……」

「五つか……最多記録には及ばないにしても、結構多い方だよな」

「問題は『神に見込まれし者』の効果だろう。クエストを何個受注しても、『クエスト遂行中』という単一の状況にあると判断されるのか、それとも……」

「……従事しているクエスト(ごと)に、補正効果が上乗せされるのか……だな」



 称号『神に見込まれし者』の効果は、イベントの間幸運値(LUC)が10上昇し、生命力(VIT)の値が5を切る事が無くなるというものである。

 このうち生命力(VIT)に関しては、称号の効果は最低値を保証するというものなので、効果の累積は生じないと考えられる。これはまだいい。

 問題は幸運値(LUC)の方で、もしもクエスト(ごと)に〝幸運値(LUC)が10ずつ(・・)追加される事になっていたら……〟


 今の今までそれに気付かなかったというのは、返す返すも一大痛恨事であった。



「……残念ながら……累積が発生していますね……」



 称号のプログラムを調べるよりも、シュウイのステータスを(じか)に――ステータス画面を介さずに――確認する方が早いという事で、ステータスデータのチェックを行なっていた中嶌(なかじま)が、聞きたくなかった答を寄越した。



「『スキルコレクター(シュウイ)』のステータス値には、現時点で+50の補正がかかっています」

「……彼のステータス画面を修正する必要があるだろうな」

「リンクを貼り直すだけだから、サービスのクローズ中に済ませられるだろう」

「それはいいが……迷惑をかけた詫びはどうする?」

「……こういうケースでのお詫びの粗品は何だ?」

「ケースにもよるんだが……ちょっとした便利スキルをセット枠込みで――というのが多いな……。でなければ、称号とか……」

「……()にか……?」



 シュウイは【スキルコレクター】の効果で、スキル枠の上限は撤廃されている。セット枠の追加は無意味だろう。スキル自体は喜ぶかもしれないが……



「……不用意に彼にスキルを与えるのは、不用心な気がしないか?」



 シュウイ本人に含むところは――少しだけしか――無いが、()(かつ)なスキルを与えると、どんな場面でどう活用するかが予測できない。どうしても及び腰にならざるを得ないのであった。



「しかし……アイテムにしてもなぁ……」



 定番なのはポーション類であろうが、シュウイ本人が【調薬(邪道) 初級】と【錬金術(邪道) 初級】のダブルアーツ持ちな上に、一級調薬師の住人(NPC)に弟子入りまでしている。多少のポーションを贈ったところで、有難味は少ないだろう。

 では、もう一つの定番である武器や防具はどうかと言うと、【スキルコレクター】の呪いのせいで武器スキルを取得できないシュウイにとっては、貰っても持て余すだけだろう。では防具の方はと言うと、他ならぬ運営が既に「シルバーバックの革鎧」というチート防具――DEF+8 VIT+4 品質B レア度6――を与えている。これを上回る防具など、そう気軽に与える訳にはいかない。


 詫びの品として何を贈るべきか、管理室の面々は頭を悩ます事になるのだが、まぁそれはそれとして――



「……幸運値(LUC)は現状で最大で50の上乗せかよ……」

「しかもこれらのクエスト、期限が明示されていないものが大半だよな……?」

「『ズートの苗の育成クエスト』に至っては、チェーンクエストだぞ……」



 ……という事はつまり、当分の間幸運値(LUC)への上乗せが続くという事だ。



「……少なくとも教会のクエストは、明日にでも達成されるだろう」

「それが唯一の救いだろうな……」



 そんなシュウイが()りにも()って、〝挙動や成長が幸運値(LUC)に影響される〟「遊び人」という職を――サブジョブではあるが――得てしまった。

 今後の展開は、はたしてどんなものになるのやら……


 多難な前途を想像して、深い溜息を()くスタッフたち。



「……幸運値に影響する(・・・・)スキルの配置は見直したのに、幸運値に影響される(・・・・・)ジョブの事は忘れていたな……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ