第八十九章 ファミリーレストラン「ファミリア」(日曜日) 4.ズートの種子顛末~瑞葉の場合~(その2)
またぞろ初耳のワードが飛び出して来たと、思わず顔を顰める蒐一。少しは掲示板も見た方が良いかもしれない。
「あぁ。クエストにはそれぞれ貢献値が設定されてあってな」
「公益性の高いクエストほど貢献値も高いのよ」
「悪いモンスターの征伐とか!」
「でな……問題の『職業解放クエスト』ってのは、今回初めて出てきたクエストなんだが、要は個人の就職に関するもんだろ? 公益性の点で微妙じゃないかと思えてな」
「え? でも、他にもその職に就く人がいるかもしれないじゃん?」
「いや蒐、抑レア職らしいから、他に希望するやつがいるかどうかが怪しいだろ?」
」
「あ~……それもそうか……」
言われて蒐一も納得の体であった。
「それで――話は戻るんだけど、どうすれば良いと思う?」
要の問いかけにう~んと考え込む匠。蒐一も一応付き合いで考えてみる。
「討伐とかが一番手っ取り早いと思うが……?」
一応提案してみるが、そんな当たり前の手段なら要がとうに考えついている筈だ。という事は……?
「えぇ。お察しのとおり、戦闘関連のスキルを持ってないみたいなのよね」
ならば生産職に倣ってはどうか。
「生産職志望のプレイヤーの場合は……作れるものの品質を上げて、それを市場に流すんだったよな?」
「そうね。けどあの娘、肝心の畑を持ってないのよね」
「畑無しで職業農家かぁ……」
「高価で高級なものを少量作るとか?」
「ブランド品?」
「ブランドを名告れるほどの知名度は無いわね」
ここで誰の口からも〝シュウイに同行して特訓〟――という発言が出なかったのが不思議なようだが……これには幾つかの事情が絡んでいた。
まず第一に、要が個人情報保護の観点から、瑞葉の名前は無論現住所も、匠と蒐一に明かしていない。なので二人とも、瑞葉がいるのはナンの町だろうと思い込んでいた。少し考えればおかしいと判りそうなものだが、てっきり要たちが護衛して連れて行ったのだろうと思っていたのである。
そして要の方はと言えば、抑瑞葉が引き籠もるに至った一因がシュウイ――の生体解剖――だと知っているため、シュウイに紹介しようなどとは考えてもいなかった。
結果として、誰一人としてシュウイの特訓という解決策を思い付かなかったのである……この場では。
「……まぁ、この件についてはもう少し考えてみるわ。みんなも考えてくれると助かるんだけど」
「あぁ」
「解ったよ」
匠と蒐一にも異存は無い。
「あと一つ二つ追加しておくわね」
そう言って要が――瑞葉の許可は得てあるそうだが――報告した称号と【整理整頓】スキルの話は、男子二人を唸らせる事になった。
「てか、蒐には関係無さそうだけどな。スキルの統合」
「けど、僕だって【整理整頓】は持ってる訳だしさ。情報があるのは助かるよ。ありがと、要ちゃん」
「どういたしまして。お礼は彼女に言ってあげてね。……それとね……彼女の言うには、発芽クエストをクリアーしたら、そのままシームレスに育成クエストが開始されたそうよ」
成る程、これは重要な情報だ。いずれトンの町を離れる予定のシュウイにとって、育成クエストを受けるかどうかには一考の余地がある。早めに教えてもらった事で、じっくりと考える余裕ができた。蒐一は要に感謝するのであった。
「長々割り込んでごめんなさいね。……それで蒐君、騒ぎになったレアスキルの事なんだけど……?」
再び蒐一のターンらしい。
「あ、うん。今から話すよ」
だが……その前に……




