第八十四章 トンの町~その片隅で~ 2.瑞葉という少女(その2)
――話は二ヶ月ほど前に遡る。
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「え~と……こんなものかな」
少女は入手したばかりのVRMMO「スキルリッチ・ワールド・オンライン」のキャラクター設定を終えて独り言ちた。親と友人に押されるかたちでゲームを始める事になり、掲示板などの事前情報を参考にしつつ、種族やスキルを選んでキャラを作成し始めて三十分弱。好さそうなスキルをチェックしていた時、そのアイデアはフラリと脳裏を訪れた。
「……スキルって、同じものを二つ選んでもいいんだ……」
何という事も無しに取得済みのスキル名を入力してみたところ、何の問題も無しに入力できた。これはつまり、同じスキルを二つ取ることができるという事ではないか?
という事はつまり……
「……スキルの効果も二倍になるって事だよね……?」
――必ずしも間違いではないが……問題はそこではない。
同じスキルを二重取りした場合、スキルの成長に必要な経験値がそれぞれに振り分けられるため、成長の速度はそれぞれ二分の一になる。要はレベルアップが遅くなる。この事はゲームの掲示板にも書いてあり、また、登録前であっても一部の掲示板は閲覧できるのであったが――生憎な事に、件の少女はその事を知らなかった。
――だから、このような判断を下す事になった。
「……うん。だとしたら、取るべきスキルは決まってるよね」
躊躇う事無くキャラクリを終えた彼女のスキル構成は、あろう事か以下のようなものであった。
[セットスキル]
・鑑定 (2)
・植物知識 (2)
・樹医の心得 (1)
・木魔法の素地 (1)
・木魔法の素地 (1)
・発芽 (2)
・発芽 (2)
・成長 (2)
・成長 (2)
・魔力回復 (2)
[控えスキル]
・採集の心得 (1)
・給水 (2)
・ライト (2)
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※()内の数字は消費スキルポイント
※残りスキルポイント 8
……これがどれだけ歪なスキル構成であるか、お解り戴けようか。
仮にも冒険者としてSRO世界にログインしようかというのに、戦闘系・回復系のスキルが皆無なのである。ならば生産職としてやっていくつもりなのかというと、生産系のスキルも一切無い。留めに、金策に使えそうなスキルがこれまたほとんど無いという……誰が見ても〝お前は何を考えているんだ?〟――と、突っ込みそうなスキル構成である。
強いて金策に使えそうなスキルと言えば【鑑定】と【採集の心得】くらいであろうが、これとて――〝野草とかを採集する機会もきっとあるよね♪〟――という、能天気な希望的観測によるものであった。ちなみに、【給水】は植物への水やり用で、【ライト】は光合成のためである。辛うじて【魔力回復】を取る事に気付けたのは、もはや奇跡と言っていいだろう。
スキルポイントはまだ8ポイントほど残っているが、スキル枠は控えに二枠を残すだけ。道を歩いているだけでスキルを拾うというSROの特性を考えると、余裕があるとは到底言えない状況であった。
――軽はずみな行動の報いはすぐに訪れた。




