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第八十三章 トンの町 9.「ナントの道具屋」(その1)

 血の凍るような虐殺の場面を見せられてすっかりドン引いているナント・モック・エンジュの三人をどうにか(なだ)めて、シュウイは当初の目的である「ナントの道具屋」を訪れていた。ちなみに、曲がりなりにも(なだ)め得たのは、シュウイならアレくらいの事はあってもおかしくないと、三人が納得したせいであるが、それは()いて――



「使い込まれた道具――ねぇ……」

「えぇ。ナントさんのところになら、持ち込まれる事もあるんじゃないかと」



 ややこしいアレコレの事情については、ナントとテムジンには予めメールで事情を説明してある。お前たちにもいずれ機を見て説明すると言ったら、新人二人組も大人しく納得してくれた。今はシュウイの指示に従って、長使いできそうな道具を――自分たちの資力の許す範囲で――物色している最中である。なお、中古品でも良さそうなものがあったら探しておくようにと言い含めてあるのだが……



「そう言われてもねぇ……シュウイ君が言うような使い込まれた道具って、僕のところに廻って来る事はほとんど無いんだよ」

「え? そうなんですか?」



 意外な返事を聞かされて驚くシュウイに、ナントが事情を説明していく。



「まずプレイヤーだけどね、武器でも何でも壊れるまで使って、新品に買い直すのが普通だよ。()わば消耗品扱いって事だね」

「あぁ……成る程……」



 (つく)()(がみ)などというビックリ情報を知っていなければ、これは当然の反応であろう。現にタクマたち「マックス」の面々が、同じような事を言っていたそうではないか。



「だとすると……住人(NPC)たちから持ち込まれた品物という事になりますか?」

「それもねぇ……」



 職人の遺品を引き取った云々(うんぬん)という話は、住人(NPC)の道具屋仲間から時折聞かされるのだが、その手の道具がナントの店に廻って来る事は無いのだそうだ。



「……単に馴染みの道具屋に引き取ってもらってるんだろうと思ってたけど……今にして思えば、これも運営の悪巧みなんだろうね」

「ここの運営は鬼畜ですねぇ」



 ……運営が耳にしたら、血の涙を流しそうな発言である。



「もしもこの情報が公開されたら、運営や住人(NPC)の反応も変わるかもしれないけどね」

「……ナントさんは公開すべきだと思います?」

「先の事はともかく、今は駄目。商人としては、先に僕が上手く立ち廻ってからにしてくれ――と言いたいところだね」



 ぬけぬけと言い放つナントを見て、



「上手く立ち廻れそうなんですか?」

「ゲーム的な視点からすると、やってやれない事も無いと思うんだよね。今まで以上に押しを強くすれば」



 成る程なぁ――と、感心するシュウイであったが、



「今は駄目だと言ったもう一つの理由はね、プレイヤーたちにどこまで信じてもらえるかが未知数だからだよ」

「未知数?」

「うん。【鑑定】のレベルが低いと、(つく)()(がみ)云々は表示されないんだろ?」



 商人のスキルで【鑑定】のレベルが高いナントでさえも、強く意識しないと道具のレベルは見る事ができなかったのだ。他者の例を挙げれば、カナはどうにか確認できたが、タクマは見る事ができなかった。シュウイが確認できたのは、スキルが【鑑定EX】になっていたためだろう。



「……話を信じてもらえず、反感だけが(つの)る可能性があると……」

「そういう事だね。せめて第一陣プレイヤーのスキルレベルがもう少し上がってくれないと、この情報は受容されないと思うよ。……多分運営としても、もっと後での公表を予定していただろうし」



 当面は情報を流さないとすると、年季の入った道具が手に入るのは、もう少し後になりそうだ。



「だったら……」

「うん。最初から長く使える道具を購入した方が良いだろうね」

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