第七十八章 「キャプテン」 12.付喪神~改めて~(その2)
「少なくとも初めのうちは、武器なんて消耗品……精々が耐久消費財の扱いだからなぁ……」
「魔法職の杖だって似たようなものよ。順次買い換えていくのが基本だもの」
所謂「銘持ち」の武器というのはあるが、それらは大抵が高性能であるがゆえに、使用者の技倆が高くないと装備できない。言い換えると、プレイヤーの武器が固定するのは、スキルのレベルが一定以上に上がってから――という事になる。
「へぇ、そうなんだ」
――その数少ない例外……と言うか、特殊な逸脱事例がシュウイである。
【スキルコレクター】の呪い――註.シュウイ視点――によって武器スキルを得られないシュウイは、開始早々からパーソナルスキルのみで闘う事を強いられていた。その彼が得物として選んだのが杖であり、【ウェイトコントロール】という癖のあるスキルを使用する事で、その破壊力を大幅に引き上げていた。
他に使用できる武器の当てが無い事もあって、ずっと同じ杖を使い続けていたのだが……
「……そうなんだよ――普通は」
「……杖一本で大量のモンスターを狩るシュウ君には、関係無いかもしれないけどね」
友人たちの言葉のとおり、シュウイは杖一本で大量のモンスターを屠って経験値に変えていた……自分と杖の経験値に。
基本的にSROでは、低ランクの武器は打撃力が小さいため、レベルアップのための経験値が得にくい――要はモンスターを狩りにくい――仕様になっているのだが……そんな事は関係無いとばかりに膨大な経験値を稼いでいたのである……その杖一本で。
「その武器の力だけで敵を斃さねば、武器の経験値にはなりませぬからな」
「魔法で斃しても駄目っていう事ね?」
「武器自体に魔法が刻み込まれている場合を除いて――ですな」
スキルコレクターのせいで、シュウイは一般的な魔法スキルが修得しづらくなっている。必然的に、獲物を狩るのも物理一択という事になっていた。
「魔法を使おうと使うまいと、プレイヤー本人のレベルアップには関係無い……だからこそ気付きにくくなっている訳ね……」
「運営の罠だよな……これって……」
普通のプレイをしている限り、それぞれの得物がレベルアップする機会は少なくなっているのである。……少なくとも初めのうちは。
「こんなに早くシュウ君の杖が覚醒するなんて、運営としても想定外――というところかしら」
「しかも、選りに選って何の変哲も無い杖だもんなぁ」
ただの杖がレベルアップを果たした――正確には、果たしそうになっている――という事から、レベルアップは特定の武器に限るとかの話ではなく、どんな武器でもレベルアップの可能性を秘めている事が考えられた。思いがけず重要な情報を知って頭を抱えた一同であったが……
「ねぇねぇカナちゃん、それって武器だけなの?」
「あ? ……どういう意味だ?」
「うん。武器以外の道具はどうなのかなって思って」
「武器以外って……鍛冶屋のハンマーとかか?」
「うん。それとか剥ぎ取り用のナイフとか」
幾ら何でもそれは無いだろうと言いかけたタクマであったが、それを制するように割って入ったのがカナであった。……彼女は気付いてしまったのだ。
「待って……プレイヤーのレベルが上がると、確かアイテムバッグの容量も拡大したわよね……」
「……そうだが……おぃ待て、ひょっとして、あれもレベルアップなのか?」
「手掛かりは最初から与えられていた――って訳ぇ?」
キョトンとするシュウイとセンをそっちのけに、頭を抱えて突っ伏す一同であった。




