第七十八章 「キャプテン」 7.付喪神~前段~
〝取り敢えず、野営地の近くで従魔になりそうなモンスターを物色してみよう。最悪一匹も従魔を得られなくても、サンチェスと契約したカナがいる訳だから、少なくとも一つだけはクエストを達成できるだろう〟
ワイルドフラワーの面々にサンチェス・シュウイ・タクマを交えて相談した結果、そういう事に話が落ち着いた。善は急げとばかりに出発しようとした一同であったが、その前に――これまでに判明したアレコレを掲示板に流す方が先だろうという事になった。何しろ、放って置くと取り返しの付かない事態になりかねない、そんな爆弾情報をしこたま抱え込んでいるのである。自分たちの精神衛生のためにも、一刻も早く放り出したいのが人情というものだ。
なので、カナとセンを除くメンバーたちは、掲示板に情報をアップするのに勤しんでいる。カナとセンの二人は、シュウイとタクマの相手役を仰せつかった形である。尤も、センの場合は掲示板など覗いた事も無いという事情もあったりするのだが。
「……さっきの失態を考えると、やっぱり警戒役の従魔を得るべきかしら」
「サンチェス船長がちゃんと気付いてたじゃん」
「それはそうだけど……警戒役が一人っていうのは心細いのよ。どうせこの先、一筋縄ではいかないモンスターばかり出てくるでしょうし」
「野営地だからって気を抜いてたのは、俺らも迂闊だったよな。安全が保証されてる訳じゃないってのによ」
――何の話かというと、野営地で熱の籠もった討論を続けていた一同に、姿を消したインビジブルマンティス二頭が奇襲を仕掛けてきたのである。
幸いにして、警戒スキル三つを重ね掛けしているシュウイと、場数を踏んでいるらしきサンチェスが奇襲に気付いたために事無きを得たのだが……
「けど、船長の早撃ち、凄かったよね~♪」
「うんうん、目にも止まらぬ――って感じだった」
センとシュウイがいたく感服しているのは、襲ってきたインビジブルマンティスを瞬殺したサンチェスの手並みの事である。あろう事か、サンチェスは二丁拳銃の早撃ちで二頭のインビジブルマンティスを仕留めたのであった。そのせいで……
・・・・・・・・
〝拳銃? それも二丁拳銃だなんて……〟
〝おや? お嬢様方はご存じない? 確かに多くはありませんが、僕以外にも拳銃使いは何名かいる筈ですぞ?〟
……と言うか、拳銃の存在自体が爆弾である。βテストでも銃器の類は確認されていなかったのだ。なのにサンチェスによれば、住民の中にも数名の拳銃使いがいるという。
この発言を聞いて、〝多くはない〟という箇所に食い付いたのがシュウイである。これがレアスキルというなら、自分にも入手のチャンスがあると考えたようだが……
〝……いや、拳銃スキルなんて、捨てるやつはいないだろ?〟
――というタクマの発言に、あっさりと沈む事になる。
一方、他の面々は、〝多くはないが、いる〟という部分に食い付いた。もしもそういう技能持ちの住民と知り合う事ができたら、銃器スキルを得る事も可能なのではないか?
〝……いや、その前に拳銃はどうすんのさ?〟
呆れたように言うシュウイ。そして、ぐっと言葉に詰まる一同。
〝……他のゲームなんだけどな、レア武器を拾ったら、その武器のスキルも付いてきたってケースがあったんだよ〟
〝拳銃もそうだと思ってんのか?〟
〝……そうだといいな――と思ってる〟
何にせよ、拳銃の事が判明した以上、これも掲示板に流す必要があるという訳で、報告組の仕事が増えたのであった。
・・・・・・・・
「――けど、やっぱりカッコいいな。それって魔道具なんですか?」
羨ましげに言うシュウイであったが、
「然様ですな。しかし所詮は人の手になるもの。シュウイ様の杖ほどではないでしょう」
……というサンチェスの返答に首を傾げる事になった。
「……僕の杖?」
「おや? お気付きでなかったですかな? 覚醒寸前にまでレベルアップしているではないですか」
「レベル……?」
訝しげに自分の杖に目を向けたシュウイの眼前に現れたのは――
【装備アイテム】杖 レベル8 品質B レア度7
長きに亘って魔物を屠り続けてきた木製の杖。付喪神として目覚めようとしている。
「……はい?」




