第七十八章 「キャプテン」 6.サンチェスさんの従魔学講座~座学篇~(その3)
独り密かにそんな事を考えていたシュウイを尻目に、ワイルドフラワーの女性陣は頭を抱えていた。
サンチェスの諫言は耳に痛いが、それはそれ。彼女たちには従魔を得る切羽詰まった理由があるのだ。この点で、使役スキルを持たないタクマや、既に従魔と召喚獣を持っているシュウイとは一線を画さざるを得ない。
(「……変なクエストが宙ぶらりんになってる訳だよね……」)
(「それね」)
(「……ひょっとして、時限クエストっていう可能性もあるのよね。……あくまで、可能性に過ぎないんだけど」)
悩ましげな表情で聞き捨てならぬ発言をしてのけたカナを、ぎょっとした様子で振り返る他のメンバーたち。
(「……どういう事だよ? カナっぺ」)
(「その呼び方は止めてって言ってるでしょ。……このクエスト、『ガヴァネスの弟子』称号が関係してるんじゃないかって話は前にしたわよね?」)
(「あぁ……そう言えば……」)
(「そんな事を言ってたっけね」)
(「問題の称号を得たのはナンの町の郊外だったでしょ。なのに、そこではクエストは発生せずに、イーファンに来て初めてクエストが発生した」)
(「……単にクエストがイーファンに仕込んであっただけじゃないの?」)
(「勿論、その可能性を否定はしない。けど、それでもなぜイーファンなのかという疑問は残る。一方、発生条件が『場所』ではなくて『時期』あるいは『状況』に左右されるのだとしたら……」)
(「……イーファンに殺到している第二陣か……」)
(「いや、でもさ、クエのトリガーにそんな変な条件を設定するかな? 幾ら何でもニッチ過ぎるんじゃない?」)
(「えぇ。単に使役職が多く住んでいる場所を訪問するのがトリガーっていう可能性もある。従魔を連れた使役職が街中を離れた場所に住処を構えるっていうのは、何となく納得できるし」)
ウンウンと頷くメンバーたち。
(「けど……そうだとしても、称号獲得から一定時間内っていう条件がある可能性は無視できないと思うのよ」)
ウ~ンと唸るメンバーたち。
正直、そこまで意地の悪いクエストだと思いたくはないが、このゲームの運営の曲者っぷりを考えると、それくらいの条件は仕込んでいるかもしれぬ。用心するに越した事は無いだろう。油断して折角のクエストを取り逃がすような羽目になったら、それこそ泣くにも泣けないではないか。
(「だったら……他の場所へ移動している暇は無い訳だから……この近くで従魔を得るって事になるの?」)
(「え~、めぼしい従魔っていなかったじゃん」)
(「……待って。従魔を持っていないからクエストが成立しなかったっていうのが正しいとしたら……イーファンまでに従魔を得ているという前提で、クエストが設計されている筈じゃない?」)
(「だとすると……そんなに凝った従魔は要らないって事?」)
(「いや……ここの運営の悪辣さを考えると、先行した者が戻って来て発動するクエストっていう可能性も……」)
(「え~と……つまり、どういう事になるんだっけ?」)
(「もう暫くここに腰を据えて従魔を探すって事じゃ……」)
「ご飯はどうすんの!?」
我慢の限界とばかりに声を張り上げたセン。そして、その意見を無視できずに頭を抱えるワイルドフラワーの面々。
しかし――そこに救援の名告りを上げる者がいたのであった。
「……あの、お嬢様方、簡単なもので宜しければ、僕が用意いたしますが?」
【料理】スキル持ちのスケルトン。その価値が嘗て無かったほどに輝いた瞬間であった。




