第七十八章 「キャプテン」 3.運営管理室(その1)
「嘘だろ……何で……」
「何で『キャプテン』がここに出てくるんだ……」
「あいつの出番はもっと後じゃなかったのか……?」
「トリックスターである『キャプテン』の解放は、色々と面倒な条件が課せられていた筈だろうが……」
運営管理室の面々は、魂を抜かれたような表情でモニター画面を眺めていた。
「徳佐! 何をやった!?」
気を取り直したセカンドチーフの大楽が、一人動じずに解説書を開いていた徳佐に向かって、声も鋭く問いかけた。
「別に俺が何かやった訳じゃない……けど、たぶんこれだな……」
「待て、徳佐、理由が判るのか?」
「だから……多分これだ。『キャプテン』の起動条件の一つに、〝【魔力操作】のスキルを持った使役職六人以上が集まる〟というのがある」
「六人以上……? あの娘たちは五人パーティだろうが? 一人足りんぞ?」
「そこは俺にも判らないな。けど、他に該当しそうな条件は無いんだ」
腑に落ちないという様子の一同であったが、そこへ恐る恐るという感じで割り込んだのが、管理室最年少スタッフの中嶌である。
「あの……多分ですが、『バーバラ』じゃないかと……条件に合致しますし……」
「バーバラ? ……誰だ、それ?」
「どこかで聞いたような……! 使役術師のNPCかっっ!?」
「NPC!?」
「そうか! あの婆さんNPCか!」
「いやまて中嶌、NPCも条件に合致するというのか!?」
「メインAIはそう判断したのかもしれません。NPCとはいえマスタークラスですから」
「マスタークラス……そう言えば、弟子を取ってたよな……」
頭を抱え込む一同に、徳佐が容赦なく追い討ちをかける。
「ま、不幸中の幸いじゃないか? 『トリックスター』の彼が合流した後だったら、最悪彼が『キャプテン』の使役主になってたかもしれないんだし」
「……悪夢だな……」
「いや待て徳佐、その可能性は無いだろう。『トリックスター』は【魔力操作】のスキルを持ってない筈だ」
「忘れたのか? 彼は木檜さんの称号を持ってるんだぞ? 『キャプテン』の解放がクエストである以上……」
「あ……」
「クエスト期間中は幸運値が跳ね上がるんだったか……」
「そういう事だ。スキルの一つや二つ持ってなくても、『トリックスター』ならそれくらい、どうとでもなるんじゃないか?」
しれっとした徳佐の突っ込みに、突っ込み返す気力も無いスタッフたち。
ちなみに、ここでコードネーム「キャプテン」ことキャプテン・サンチェスの起動条件を明らかにしておくと、
・三大使役職の全てが解放されている事。
・魔力操作のスキル持ち六人以上が一所に集まる事、なおかつ、その過半数がLv2以上である事。
・その中に使役職が含まれている事。ただし、ここがミソなのだが、キャラクタークリエイトで従魔術師や召喚術師を選んだ者は対象外とされている。これは、モフモフ党がスケルトンを得て困惑しないようにという「モフモフの女帝」の指示であったというが、確かなところは不明である。
・時間の経過、すなわちゲームの進行とともに起動条件は緩和される。
「……一応、起動条件は満たしている訳か……」
「『キャプテン』は自律行動型の『トリックスター』だ。そのあたりはキチンと判断するだろう」
「だが、死霊術師でもないプレイヤーと契約したのは何故だ?」
「見かけはあんなだが、『キャプテン』はアンデッドモンスターとは別枠の扱いになっている筈だ。そのせいだろう」
頭を抱え込むスタッフであったが、
「……最悪の事態は回避できた……そう考えよう」
「だな……『トリックスター』が『トリックスター』と契約するなんて、悪い冗談以外の何物でもない」
「そういうレアケースは考えてなかったからなぁ……」
一応は前向きな態度に見えるが、その実自分たちを慰める事しかしていない。その意味では現実逃避に耽っていたスタッフたちに、情け容赦の無い追い討ちがかけられる。
「あのぉ~……あのガイコツさん、従魔契約の裏話を色々と暴露してますけどぉ……?」
スタッフたちが再び頽れたのは言うまでも無い。




