第七十七章 SOSカナさん 3.タクマの経緯
では、タクマの方はどうなのかというと、やはり話は前日に遡る……
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《アルファンの宿場に到着したプレイヤーが現れました。これによりアルファンの宿場、およびナンからアルファンまでのルートが開放されます》
SRO内に流れたメッセージを受け取ってガッツポーズを決めているのは、タクマを始めとする攻略チーム「マックス」の面々である。
追捕クエストで捕縛した脱走犯を護送して、無事にここまで辿り着く事ができた。到着と同時に開放のメッセージが流れたのだから、これは盛り上がるなと言う方が無理であろう。
「よっしゃあっ!」
「狙いどおりアルファン開放だな」
「ここからシアの町を目指す訳だが……多分、また別のクエストが必要になるんだろうな」
「あぁ。ナンの町のエリアボス討伐が、その条件じゃないかって話だな」
「『死刑宣告者』か……」
ゴッタ沼を縄張りとするエリアボス、「死刑宣告者」については、βプレイヤーたちには苦い思い出がある。複数のパーティを集めユニオンを組んで討伐に当たったのだが、ただでさえ硬い上に紫斑毒という厄介なものを撒き散らす「死刑宣告者」に大苦戦。手こずっているうちに、何とエリアボスが逃亡するという予想外の事態に直面する。
呆然としていたところに、脱出した「死刑宣告者」が他の町を襲って壊滅させたというメッセージが流れ、討伐クエストは無惨な失敗に終わったのである。
「……あの時は、掲示板が荒れたよな……」
「今度こそは失敗せずに……」
「タクマ、紫斑毒のワクチン……だっけ? 用意はできてんのか?」
「そっちの方はケインさんたちが動いてるみたいだな」
「『黙示録』か……」
「なぁ……今、気付いたんだが……あの時壊滅した町って、アルファンじゃないのか?」
「あ……」
「位置的に見てもその可能性は高いな。雰囲気も似通ってるし」
「今回も……討伐に失敗したら、ここが壊滅するのか……?」
「……待て。β版ではその壊滅した町へ、俺たち行ったよな……?」
「あ……」
「……そういう開放ルートもあるって事か?」
運営の意地の悪さに唖然とする一同。とは言え、自分たちで開放した宿場町だと思えば、思い入れも一入である。今度はそんなヘマはしないぞと各人が誓いを新たにしたところで……
「……お? メールが入って……はぁっ!?」
メールを受け取ったタクマが驚きの声を上げる。選りに選ってあの「雪の女王」からのSOSメールである。タクマが驚くのも無理はない。
「どうした?」
「あ……いや、『ワイルドフラワー』の知り合いからSOSが送られてきた」
「はぁっ!?」
「魔女っ子パーティからか? 何があった?」
「判んね。SOSってあるだけだ。イーファンにいるらしいが……」
カナからのSOSとなれば、何をおいても駆け付けてやりたい。しかし、折角アルファン一番乗りを果たしながら、ここを放ってイーファンまで戻るというのも……
苦衷のタクマを目にしたリーダー・サントが折衷策を提案する。とりあえずタクマだけがイーファンに戻り、他のメンバーはクエストの後始末を着ける。もしも手勢が必要と判れば、その時点で残りのメンバーも急行する。
「ワイルドフラワー」とて歴としたβパーティである。たかがイーファンに現れるような敵に後れを取る事はあるまい。ならば、パーティ全滅の危機とかそういうトラブルではない筈だ。
「いや……パーティ全滅の瀬戸際に、遠くにいる知り合いにメールを送るゆとりがあるとも思えんが……」
「ま、それはともかくとしてだ、リーダーの案はまともなところじゃないか?」
「だな」
「悪い。今度何か美味いもんでも作るわ」
という事に話は纏まったのだが、ここで問題になるのがアルファンとイーファンの距離である。間にナンの町があるくらいだから、アルファンまで移動するにはそれなりの日数がかかる。だが……
「……開放特典がコレっていうのは……運営が狙っての事なのか?」
「さすがにそれはないと思うが……」
タクマたちに開放特典として与えられたのは、アルファンと各地を結ぶ高速便のチケットであった。アルファン開放により移動距離が長くなる事を考えて、高速便の利用が解放されたという事のようだ。
「今から急げば、明日の朝にはイーファンに着くだろ」
「おぉ……結構速くなったんだな」
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……斯くいった次第で、タクマは現在イーファンの宿場にいるのである。




