お正月特別SS 座右の銘~匠の場合~
今回はお正月特別SSとして二話を公開します。
「あ~、糞っ! 半沢の野郎面倒な課題出しやがって!」
「本当だよ~……」
苦い顔をして頭を抱えている匠と茜、そしてそれを不思議そうな面持ちで見つめる蒐一と要という、いつもの情景が繰り返されていた。
「大体何だよ、ザウノ……って?」
「……匠、座右の銘な? せめて読み方ぐらい知っておけよ?」
「お、おう……。で、何なんだよ、これ?」
軽い溜息を一つ吐いて説明を始める蒐一。
「だからな、常に自分の座席の近くに置いて、自分の戒めとする語句の事だよ。日常生活や人生の目標あるいは指針となる……」
「あーっ! 余計解らん!」
「匠君、モットーの事よ」
「……何だよ、それならそう言や良いじゃねぇか、何でわざわざややこしい言い方をするんだよ」
「いや……一応現国の課題……まぁ良いや。で、匠のモットーは?」
「モットーなぁ……」
う~んと考え込んだ匠を励ますように要が声をかける。
「難しく考えなくても良いわよ? 気に入った言葉とかは?」
「『来た、見た、食った』」
「……それ、間違いだからな? 正しくは〝食った〟じゃなく〝勝った〟だ」
「……いえ、文明論的には深い意味があるのかもしれないわ。……他には?」
「う~んと……あ、『食足りて礼節を知る』」
「衣は不要なのね……」
「『当たって砕けろ』」
「うん……しょっちゅう砕けてるな。……他に無いのか? 匠」
「む~……あ、『俺の前に道は無い、俺の進むところが道』」
「……前半は高村光太郎の『道程』かしら?」
「後半が台無しにしてるけどね。……そう言えば匠、お前、中学の英語の時間に、オフ・コースを〝外道〟って訳してたよな? しかも〝of course〟と〝off course〟を混同して」
「……似たようなもんだろ? どっちも道を外れてるって意味じゃね?」
「意味が微妙に違うんだよ……」
「え~と……じゃあ、『腹八分』」
「健康を考えると、残りの九割二分は空けておけって事だって、知ってたか?」
「マジで!?」
「……蒐君、からかうのはそれくらいで」
ギロリと蒐一を睨み何か言おうとする匠に、茜が声をかける。
「ねぇねぇ、匠君、課題はどれを提出するの?」
「あ~……」
「……匠、高村光太郎のにしとけ。正しいのを教えてやるから」
「……悪い……蒐」
次回もSSを二話公開の予定です。




