第七十六章 篠ノ目学園高校 3.放課後(その1.「鼓吹の鈴」)
放課後、蒐一たちは教室の隅で話し込んでいた。GWで出費が嵩んだため、喫茶店などへ行くのを控えたのである。
「……へぇ、要たち、そんな妙な事になってんのか」
「……初召喚って、そんな事があるんだ……」
要から「ワイルドフラワー」が陥っている苦境(?)を聞いて、目を丸くする男子二人。尤も、蒐一が興味を引かれているのは、報告の中で要が言及したサモナー板の情報……初召喚時には偶に召喚リストに載っていないモンスターが召喚されるという情報と、その原因に関する仮説の方であった。
「……蒐君、何か訳ありなのね?」
そんな蒐一の様子を見て、何かあるらしいと看破する
要。長年幼馴染みをやってるのは伊達じゃない。
「う~ん……話す事が色々あって紛らわしいから、順番に話すよ」
「色々……」
「おぃコラ蒐、一体何をやらかした?」
元凶扱いされた事に不服そうな表情を浮かべたものの、自分でも思い当たる節があったらしく、粛々と昨日の報告をしていく蒐一。新人二人の指導ペースを見直した事は評価されたものの、ナントの店で「鼓吹の鈴」を購入した時の一件――それ自体は感謝された――が順当に物議を醸す事になる。
「錬金術の素材って……」
「……蒐君……そういう事は早めに教えて欲しかったわ……」
「え? だから今教えてるじゃん。どうせ要ちゃんたちだって【鑑定】ぐらいかけたよね?」
「……普通の【鑑定】はね。【素材鑑定】なんて考えもしなかったわよ……」
「あ……そうか、そういう事もあるんだ……」
「あるんだ――って……」
「そっちの方が普通だよね」
三者呆れたようにそう言うが、蒐一もといシュウイは普通の【鑑定】など持っていない。所有している鑑定スキルが【素材鑑定W】と【従魔鑑定Tri】だけだから、それに頼っているだけである。そのせいでこんな騒ぎを引き起こしたのだとしても、それを責めるのは不当というものであろう。
「……とにかく、帰ってログインしたら真っ先に確認してみるわ。普通の【調薬】や【錬金術】でも素材にできるのかどうかを確認しないと」
「――へ?」
「……あ……蒐の邪道スキルか!」
「えぇ。何となくだけど、普通の【調薬】や【錬金術】では扱えない素材のような気がするのよ。その件でパーティメンバーにも話を通す必要があるけど、構わないかしら?」
要ことカナは【調薬】は持っているが、【錬金術】は持っていない。ゆえに、【錬金術】で「鼓吹の鈴」を扱えるかどうかは、他のメンバーに確認してもらう必要がある。
「うん、全然構わないよ。結果を教えてくれたら僕も嬉しいし」
「じゃあ、ログイン次第確認してみるわね」
この予定がログイン早々に狂う事など、神ならぬ身の要に予測できよう筈も無かったのであるが、それはさて措き――
「で? 当然それだけじゃないよな?」
「僕を何だと思ってるんだよ、匠。……まぁ、その後は東のフィールドに出たんだけど……」
成る程。そこで何やらやらかしたんだな――と、察する幼馴染みたち。どうやらこれからが本番のようだ。




