第七十六章 篠ノ目学園高校 2.昼休み(その2)
憤慨している蒐一にジットリとした視線を向ける匠であったが、要は何か考え込んでいる様子であった。
「ねぇねぇ匠君、それで、もう一つの話って?」
蒐一の憤慨も要の思索もどこ吹く風とばかりに、匠に問いかけたのは茜であった。
「あぁ……こっちもまだはっきりした事は言えないんだけどな……リャンメンの村の近くに何か秘密があるって話とか、聞いた事無いか?」
聞き捨てならない内容に思わず耳を欹て考え込んだ三人であったが、すぐに問題のおかしさに気付く。
「……おぃ匠、昨日開放されたばかりの村の秘密なんか、知ってるやつがどこにいるんだよ?」
「あ~……言い方が悪かったわ。何か隠された秘密とかクエストとか、聞いた事は無いか?」
「どういう事かしら?」
「説明! 説明を要求する!」
「あ~……実はな……」
頭を掻き掻き、昨日マギルが言い出した内容について説明する匠。三人は黙って聞いていたが、
「成る程ね……シルの時みたいに、何かが封じられている可能性を考えたんだな?」
「まぁな。考えられない事じゃないだろ?」
「いえ……どうかしらね……」
「要ちゃん?」
考え込んだ様子で疑義を呈した要に、一同が揃って視線を向ける。
「いえ……まだ上手く考えが纏まってないんだけど……多分だけど、リャンメンの村の開放は、運営にとっても想定されたスケジュールだと思うのよ」
「うん?」
「まぁ……解るけどな」
「だったらどうなの? カナちゃん」
「予定されたスケジュールで開放されたという事は、アルファン行きの選択肢が出るタイミングも運営の予定どおり、つまり、この時点でその『何か』についてのヒントも出ているんじゃないかと思うのよね」
「あー……」
「それはあるかぁ……」
蒐一が幻獣の卵を解放したが、あれは運営の予想外のタイミングだった筈。本来であれば何らかのヒントなり何なりが出ていてもおかしくはないのではないか。そう考えるのなら、幻獣のような大ネタが隠されている可能性は小さい、少なくとも、今回の選択肢が暗示している可能性は小さいのではないか。
「だけど、マギルさんの感じた違和感が、ただの気のせいだとも思えないのよね」
「SROの運営だからなぁ……」
「気付きにくいところに手掛かりを置いていそうだよねぇ……」
「ねぇねぇカナちゃん、何かアイデアがあるの?」
「アイデアと言うほどの事でもないけど……ギルドの受付はヴォークの実の事を口にしていたのよね?」
「あ!」
「ヴォークの実か!」
「……それ、何なのさ?」
独り蚊帳の外に置かれた形の蒐一に、要が噛んで含めるように説明する。強壮強精の薬効がある果実で、産地が限られている事から、目の玉の飛び出るような価格で取引されているのだと。
「……つまり、その実が採れる可能性があるって事?」
「選択肢という形で示唆されたところをみると、採集のタイミングが限られるのかもしれないわね。護衛クエストを終えて戻ってみても、もう採れないとか」
「マジかよ……」
「あくまでも可能性よ?」
「だったら、要ちゃんたちが同じクエストを受けて、その後で探してみれば判るじゃん?」
「……蒐君? か弱い女の子に、凶悪犯を取り抑えるなんて依頼を受けさせるつもり?」
「魔法無効の敵らしいから、どっちかってぇと蒐の獲物じゃね?」
「僕がそこまで行くのって、いつになるか判んないぞ?」
「ま、検証できない以上、この話は単なる想像だしな。黙っておくように提案してみるわ」
――ちなみに、「ダンジョン」という可能性は誰の頭にもチラとも浮かばなかった。




