第七十五章 イーファンの町~「ワイルドフラワー」~ 2.事案発生(その2)
「今のところは単なる思い付きでしかないわよ? まず、このクエストらしきものが五回繰り返された事だけど、私たちの人数に対応しているんだと思う」
「――へ?」
「一人一回って事?」
何人かは同じような事を考えたらしく頷いているが、彼女たちもそこから先は考え付かなかったらしい。と言うか、妙な事があり過ぎて考えが堂々巡りになっているのである。
「次に、私たちが立て続けにクエストらしいものに巻き込まれた理由だけど……これは完全に憶測よ? ……称号だと思う」
「称号?」
「そんな称号……って、あ!」
「『ガヴァネスの弟子』!」
妙な展開が続いたために忘れていたが、この五人に共通でしかも使役職に関係しそうな称号など、一つしか無い。
「……このゲーム、称号の効果については明らかにしてくれないから……」
「けど、可能性は高い」
恨めしげにエリンが述べたとおり、SROにおける称号の扱いは中々微妙なものになっている。何らかの効果を持つ称号も多い反面で、単なるフレーバーテキストのようなものも少なくない。しかも、その称号がどのような効果を持つのか持たないのかが、明示されるとは限らないのである。シュウイが得た友誼称号にしても、その効果について全てを説明しているかどうかは大いに疑わしいのであった。
話を戻すと、ワイルドフラワーの面々が得た「ガヴァネスの弟子」という称号には、使役獣との契約成功率が微上昇する(ただしアーツのレベルに依存)、使役術絡みのイベントに出会う確率が上昇する、などの効果がある。そんな称号持ちが五人も揃っているのが、今回の珍イベント発生の一因であった。
「称号を貰って割とすぐに一連のクエスト(仮)が発生した事からも、可能性は高いと思う。多分だけど、称号以外にも何かのトリガーがあって、それを満たしたって事なんでしょうね」
う~んと唸って考え込む一同。
「でもカナちゃん、クエストが失敗したのは何故?」
「問題はそこ。多分だけど、クエストは失敗していないんだと思う」
「「「「――え?」」」」
「思い出してみて。今までに〝失敗〟っていうメッセージは流れなかったでしょう?」
「あぁ……そう言われてみれば……」
「このゲームって、そこらへんはハッキリ提示されるよね……」
「と、いう事は……」
「えぇ。メッセージにあった〝条件〟っていうのを満たせば、クエストが成功する可能性はあると思う」
こうなると、その〝条件〟というのが何かというのが気にかかる。カナの事だからそこまで推論を巡らせているのではないかと問い詰めたところ――
「あくまで可能性としてだけど、使役獣と契約していないのが敗因じゃないかと思ってる。今までのケース、住人の使役職に会ったか会わないかという時点でメッセージが出てたでしょう?」
要するに、使役職ならという但し書きが付くのかもしれないが、一目見ただけで確認できる事が原因の筈だというカナの指摘に、成る程と頷かざるを得ない一同。
「……という事は、当初の予定どおり従魔の確保を優先する必要があるって事?」
「そうね」
「……なのに、クエストに妨害される形で貴重な時間を潰した」
「「「あああっ!」」」
ミモザの冷静な突っ込みに悲鳴を上げる三人。
「……こんな悪質な妨害クエストがあるなんて……」
「いえ……別に妨害を目的としていたんじゃないと思うわよ?」
「結果的には同じじゃない~(泣)」
「ついでに言うと、モンスターの出現は時刻と明確な相関がある。日暮れが近付くほど、アンデッド系のモンスターが出現し易くなる」
「「「――っ!(泣)」」」




