第七十四章 追捕クエスト第二幕~「マックス」~ 3.深まる謎、もしくはその萌芽
「気になる事?」
「あぁ、一つ目は昼間の犯人の反応だ。ルヴァを見て明らかに狼狽えたようだった」
「あぁ……確かに」
「ビクっとしたように一瞬止まって、それから向きを変えたよな」
「……そうなのか?」
サントとバルトは空き家の中にいたので見えなかったようだが、マギルの傍にいたバリスと、反対側で待ち構えていたタクマにはその動きが能く見えていた。
「能くは判らんが、ルヴァには何か秘匿されたスキルのようなものがあるのかもしれん。……単なる種族特性のようなものかもしれんが」
「ま、別にデメリットにゃならなそうだから、気を揉む必要は無ぇんじゃねぇか?」
「それはそうだが、召喚主としては知っておきたい」
「……ちっとばかし探ってみるか。友の会の連中は……フクロウの存在自体知らなかったみてぇだし、あまり当てにゃできねぇかもな」
「フクロウの方ではなく、犯人の方に問題があるのかもしれん。役人にそれとなく聞いた方が良いかもしれんな」
「……フクロウ恐怖症とかか?」
「それか、宗教的な禁忌事項とかな」
これは意外に根の深い話になるかもしれない。が、何にせよ知っておいた方が良いだろうという事で話が纏まった。
「で? もう一つは何なんだ?」
「あぁ……考え過ぎかもしれんが、護送の依頼が出された事だ」
はぁ? ――と不得要領な一同に向かって、マギルは自分の考えを述べていく。
「護送依頼が出されたという事は、我々に対して、それを受けないという選択肢が提示されたという事でもある。なら、どういう場合に依頼を拒否するのかを考えてみた」
考え過ぎと自嘲する割には、聞き逃せない話のような気がする。思わず居ずまいを正して聞き入るメンバーたち。
「素直に依頼を受ければ、アルファンの宿場町を開放できる。それを断るのはどういう場合かというと……」
「……宿場町の開放を望まない場合――か?」
「もしくは……」
「もしくは?」
「宿場町の開放よりも重要な何かが存在している場合――そうは考えられないか?」
ぼそりとした口調でマギルが投げ込んだ爆弾に、無言で考え込むメンバーたち。成る程。考え過ぎの可能性も無いではないが、さりとて無視できるほど軽い内容でもない。
「……重要な何か――というのは?」
「プレイヤーの個人的な事情がある場合を忖度しているだけかもしれん。だが、何かのイベントが、他ならぬここリャンメンの周辺に隠されているのかもしれん」
黙って聞いているタクマには、内心で思い当たる節があった。悪友が遭遇した、幻獣の卵解放クエストの事である。あれはどうやら東西南北の四つの町に封じられているようだから、ナンの先の宿場町のそのまた外れにある一寒村にいるとは思えないが、幻獣以外の何かが隠されている可能性は否めない。
「そうすると……軽々しく受けたのは早計だったか?」
「いや。現時点では何の手掛かりも無い、文字どおり空想妄想の類でしかないんだ。実利のある護送依頼を受けるのは当然だろう」
「ただし……その後でちょいと探ってみても、悪い事は無ぇよな?」
バリスの提案は満場一致で受け容れられたのだが……
「そうなると……俺たちだけじゃ目立つかもしれんな。タクマ、お前のリアフレ、抜け駆けとかしそうなタイプか?」
「いや……? 『ワイルドフラワー』の連中も、トンの町でソロやってるやつも、理由さえ説明すれば抜け駆けなんかはしないと思うが……話せってのか?」
「『ワイルドフラワー』のお嬢さんたちとは、何だかんだで協力してるしな。ソロのフレンドも、何か妙に引きが良いみたいじゃないか?」
「あ~……カナとセンはともかく、もう一人はトンの町にいるからなぁ……。ここまで出て来るのはまだ先になりそうだが……みんなが構わねぇなら、明日にでも話してみるわ」




