第七十四章 追捕クエスト第二幕~「マックス」~ 2.追捕クエスト始末
結論から言えば、ターゲットである脱走犯の捕縛は恙無く終了した。
裏道を通って気付かれる事無く目的の家を包囲し、入口からサントとバルトが突入したのである。脱走犯は窓から飛び出して逃げようとしたが、なぜかマギル――と言うよりも、その頭上のルヴァ――を見て怯んだように向きを変えたところでバリスが投げたボーラに足を止められ、タクマの接近を許してしまう。
短剣を振るって抵抗した脱走犯の技倆は見事なもので、【捕り手術】を覚えていない者では取り抑える事は覚束無かったろう。
ただし、タクマは【捕り手術】から派生した【介者剣術】を習得している上に、リアルで蒐一から歌枕流捕り手術の指導を受けている。基礎的かつ型通りの動きなどに手子摺る訳も無く……
「放せっ! 畜生っ!」
「誰が放すかよ! 神妙にお縄を頂戴しやがれっ!」
「おー……」
「これはまた、見事なものだ」
「俺だったら多分逃げられてたな」
「成る程……こりゃあ、覚えておいて損は無ぇテクだわな」
斯くして、タクマたち「マックス」は脱走犯の捕縛に成功したのであったが……
・・・・・・・・
「護送?」
「あぁ。アルファンの宿場町から、こいつの身柄を受け取りに役人が来る。ついでだから、町までその護衛を頼みたい」
冒険者ギルドはアルファンまで案内する手間が省け、領主の方は大勢の役人を動かす面倒から解放される。なおかつ、タクマたちには護送の実績と経験値、依頼料が入るという、一石三鳥の提案であった。無論、タクマたちとしても拒否する理由は見当たらない。
「と言うか、抑俺たちがアルファンまで辿り着かなきゃ、開放クエストの達成にゃならないわな」
「追捕クエストの方は達成されたってメッセージが出たけどな」
捕縛した脱走犯をリャンメンの村の冒険者ギルド――兼、宿屋――に引き渡したところ、追捕クエストの達成メッセージが表示された。しかし、リャンメンの村が開放されたというメッセージは流れなかったため訝しく思っていたのだが、どうやら次のステップに進んでいたようだ。
「もしもここで拒否したら、どうなるんだ?」
「……リャンメンの村だけが開放された事になるんじゃないのか?」
「その後、俺たちがアルファンの宿場町に辿り着いて、初めて開放になるんだろう」
「俺たち以外の誰か、という可能性もあるけどな」
ともあれ、
「ここで拒否る流れは無いわな」
「だな」
――という事になって、そのまま護送依頼を受注する事にしたところ、ギルドの受付はほっとしたようだった。
「ありがたい。断られたら色々と面倒な手続きを踏まにゃならんとこだった。礼って訳じゃねぇが、考課にはちいっとばかし色を付けとくわ」
「そりゃどうも」
そうして護送依頼を引き受けた時点で、リャンメンの村が開放されたというメッセージが流れたのであった。
・・・・・・・・
宿の部屋に引き上げてきたところで、黙って何か考え込んでいたらしいマギルが口を開いた。
「二つばかり気になる事がある」




