第七章 篠ノ目学園高校(月曜日) 2.放課後
僕たち――いつもの三人に要ちゃんを加えた四人――は、「帳と扉」という行きつけの喫茶店で話し込んでいた。雰囲気のある名前なのに、僕たち常連の間では「幕戸」という身も蓋もない略称(?)で通っている。
「こうしてカナちゃんと喋るのも久しぶりだね~」
「このところゲームの中でしか会えなかったしね」
「あれ? ひょっとして要ちゃんもSROやってんの?」
「蒐君も始めたのよね。 早々と掲示板を賑わしてたわよ?」
「その話はもういいよ……あれ? って事は、僕の悩みも知ってる?」
「あ、俺が話しといた。どうせ教えんだから、早い方がいいだろ?」
「匠、個人情報って知ってるか? ……まぁ良いけど」
「あたしが聞いたのは、何か怪しげなスキルで盗賊団を皆殺しにしたってところまでだけど?」
「皆殺しじゃないよ! 僕が殺したのは二人だけ! 他はケインさんたちが殺ったんだよ」
「盗賊団なのは否定しないんだ……何人いたの?」
「八人……で、僕たちが六人」
「ああ、『黙示録』なら問題にもしないでしょうね」
「うん。ほぼ瞬殺だったみたい」
「蒐は何で殺ったんだ?」
「【腹話術】で注意を逸らして、手裏剣で仕留めた」
「お? 【手裏剣】なんてスキル、手に入ったんだ?」
「何言ってんのさ? 手裏剣くらい匠も投げれるじゃん」
「あぁ……そっちのスキルか……」
「蒐君って、ほぼパーソナルスキルだけで闘ってるの?」
「だって……スキルが取れないから仕方ないんだ……」
「はいはい、誰も責めてないからね」
「『惨劇の貴公子』ならではだよな」
「やめろよ……その渾名で呼ぶの……」
注文していた軽食が届いたので、それを食べながら話を続ける。ちなみに僕はシーフードスパ、匠はカツカレー、茜ちゃんはチョコパフェ、要ちゃんはプリン・ア・ラ・モードだった。
「けど……何のスキルが来るか判らないんじゃ、アドバイスのしようもないわね」
「だよな~」
「持っておいた方が良いアイテムとかは?」
「野営の道具は持ってるのよね?」
「うん。エレミヤさんに選んでもらった」
「武器は?」
「杖とクロスボウと短剣、あとは手裏剣と吹き矢にバグ・ナクかな?」
「後半三つがおかしい」
「PKの遺品だから」
「ねぇ、蒐君、剣はどうしたの?」
「あ、売っちゃった。現実でも西洋剣って使った事ないし、スキルも取れそうにないから」
「まぁ……蒐の場合はそうなるか」
「じゃぁ……中距離がクロスボウ、接近してからは杖、密着したら体術とバグ・ナク……って事かしら」
「……意外と使えそうだな」
「物理一択かぁ……」
「だって、魔法使えないもん」
「魔道具は?」
「いや? 戦闘向きの魔道具ってあったか?」
「効果付きの武器かな?」
「僕、武器スキルって持ってないよ……」
「あ、ええと、確か【鑑定】能力付きの眼鏡があったよ……高いけど」
「そうそう、ナンの町には魔道具屋もあるし、何か掘り出し物があるかもな」
「魔道具かぁ……」
探してみるのもいいかもね。
「蒐がナンの町に来たら、俺たちとも会えるかもな」
「みんなナンの町にいるの?」
「うん。あたしたちも昨日着いたところ」
「どっかで待ち合わせるか?」
「う~ん。ケインさんたちと一緒だし、予定がはっきりしないかな」
「蒐君だとイレギュラーな方向に進みそうよね」
「何でさ」
手裏剣で人一人仕留めるなんて普通はできませんが、シュウイの場合は比較的近距離から、後ろを向いた相手の延髄に命中させたため、クリティカル扱いになったようです。
次話は金曜日に投稿します。




