第六章 ナンの町へ 7.野営
盗賊一味を始末した後に、三枚のカードが残っていた。あぁ、これが匠の言ってたカードか……してみると、盗賊のうち三名はNPCだったって事みたいだ。懸賞金が出るとか言ってたな……。そんな事を考えていると、ポーンと言う電子音とともにウィンドウが開いた。ケインさんたちも反応しているから、僕個人に宛てたお知らせじゃないって事だ。
《クエスト「トンナン街道の盗賊」をクリアしました》
《クエスト報酬を入手しました》
お、報酬は何かな?
【装備アイテム】シルバーバックの革鎧
DEF+8 VIT+4 品質B レア度6
牡の銀毛鹿の革で作られた鎧。軽いが丈夫。
おおっ、これって結構凄いんじゃない? けど、シルバーバックって……あぁ、背(back)じゃなくて牡鹿(buck)ね。
思いがけないクエスト報酬に喜んでいたシュウイであったが、ふと顔を上げるとケインたちが自分の方を向いているのに気がついた。
「……あの、何か?」
「あ、いや、シュウイ少年のクエスト報酬が何だったのか気になってな」
「は? 人によって違うんですか?」
「あたしたちの報酬はスキルオーブだったのよ。それで、スキル入手に縛りがある筈のシュウイ君はどうだったのか、気になって」
スキルオーブ?
「あの……皆さんはスキルオーブだったんですか?」
「ええ、あたしとヨハネは魔法スキル、ケインがなぜか生産スキル、エレミヤとダニエルは身体スキルね。割と一般的なスキルだけど」
「一般的な」――すなわち、広く受け容れられた――スキル。それこそシュウイには望んでも得られないスキルであり、彼が求めてやまないものでもあった。ベルの無情な言葉を聞いて崩れ落ちるシュウイ。正しくorzのポーズである。
「なんでっ……僕だけ……」
打ち拉がれるシュウイの耳に、あ~やっぱり、とか、案の定、とか言う声が聞こえてくる。
「ま、まぁ、盗賊たちから奪ったスキルが五つもあるんでしょ。あたしたち一人一人のの五倍じゃない、五倍」
「使い勝手は五分の一以下だと思いますけどね……」
「あ……えと……」
「そ、それで、シュウイ君は……代わりに何を貰ったんだい?」
「あ、はい。シルバーバックの革鎧だそうです。DEF+8とVIT+4の効果が付いてます」
シュウイのカミングアウトにどよめく「黙示録」の面々。
「それ、物凄い性能だからね」
「こんな序盤で出る品物じゃないわよ」
「『スキルコレクター』の効果で通常のスキル獲得ができない分、運営が奮発したようだな」
「防御力は格段に上がったよ、間違いなく」
「黙示録」の励ましを受けて、気を取り直すシュウイ。確かに、現時点では充分に有効な装備に違いない。それを手に入れられた幸運を、素直に喜ぶべきだろう。スキルは確かに五個も強奪したんだ。
「お見苦しい姿をお見せしました」
「いや、気にしなくていいから」
ちょっと取り乱したけど、そこは大目に見て欲しい。それより気になるのは……
「でも、いつの間にかクエストが始まってたんですね?」
「ああ、シュウイ少年は知らないか? このゲーム、大規模なクエストの他に、こういう隠しクエストが結構あるんだ」
「隠しクエスト、ですか?」
「例えば今回のクエストで、今から盗賊退治クエストが始まりますって説明されたら、不意討ちは無くなっちゃうでしょう?」
「あぁ、そうですね。あと、盗賊側にもプレイヤーが参加していたって事は、向こうは向こうで別のクエストがあったんですか?」
「多分、僕たちを襲うのが彼らのクエストだったんだろうね」
「油断のならないゲームですねぇ……」
「みんなそう言ってるよ……」
・・・・・・・・
その後は大したモンスターも現れず、従ってクロスボウの出番も来ずに、野営予定地に到着する。僕が未成年という事で、一番楽な最初の夜番を仰せつかる。
「そう言えば、野営の時はどうなるんですか?」
「野営の申請を出しておくと、サービス終了まで起きていたキャラが徹夜した事になるのよ。申請し忘れたら寝落ちした事になって、運が悪いと寝ている間にモンスターに襲われた事になるわ」
「申請していれば大丈夫なんですか?」
「ええ。不寝番がいる事になって、モンスターは寄って来ないみたい」
「では、シュウイ少年、申し訳ないが、最初の夜番を頼む」
最初の夜番を恙無く済ませると、僕は寝具にくるまってログアウトした。
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《シュウイのスキル一覧》
レベル:種族レベル2
スキル:【しゃっくり Lv1】【地味 Lv2】【迷子 Lv1】【腹話術 Lv2+】【解体 Lv5】【落とし物 Lv6】【べとべとさん Lv2】【虫の知らせ Lv1+】【嗅覚強化 Lv1+】【気配察知 Lv1+】【土転び Lv1】【お座り Lv0】【掏摸 Lv0】【イカサマ破り Lv0】【反復横跳び Lv0】【日曜大工 Lv0】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv3】
成熟した雄のマウンテンゴリラは、背中に銀色がかった体毛が発達するので、シルバーバックと呼ばれる事があります。
次話は金曜日に投稿します。




