第五十七章 ナンの町 6.「マックス」(その3)
「いや……それもだが……攻略組へのプレイヤーキル依頼が発生するんじゃないかって懸念されているようだ。さっき話に出てきたクエストとしてな」
「「「……はぁっ!?」」」
予想外の言葉を聞かされて、思わず目を剥いて硬直する一同。
「まぁ……運営もそこまで外道な真似はせんだろうとの意見が支配的だが」
ここの運営は鬼畜まがいの所業で評判をとってはいるが、さすがにプレイヤー同士の対立を煽るような真似はしないだろうとみられている。
「……ただ、それでも警戒しているプレイヤーはいるらしくてな。それもあってか、後付けで死霊術を取ろうという者は多くないようだ」
「……結局、死霊術をとった者としちゃあ、どうするのが正解なんだ?」
痺れを切らしたように問い詰める斥候。他の三人は顔を見合わせていたが、やがて皆を代表する形で魔術師が口を開く。
「……『友の会』の連中は、積極的に死霊と会って会話する方針をとっているようだ。他の二つの使役アーツに較べると色々制約がある訳だから、レベルアップの機会は逃したくないという事なんだろう」
「どうせタクマとサントはもうしばらく動けんだろうしな。外に出るって言うなら付き合うぞ?」
「俺も初召喚を試したいしな……何が出るか判らんのだが」
「とりあえず、仮免ぐらいは脱しておかなきゃ話にならんか……」
――という次第で、ナンの町の外に広がるフィールドで運試しをしてみようという事になる。アンデッドが出るか出ないかは不明――未検証ながら、夜間に多いというような単純なものでもないらしい。これについては、プレイヤーの便宜を図ったのだろうと言われている――だが、少なくとも町の中よりは出会う機会も多いだろう。それに、どのみちマギルの召喚も試してみる必要がある。こちらも人目の多い街中でやれるようなものではない。
いざ出陣となりかけたところで、斥候職のバリスがふと呟いた。
「……そう言やぁ……スキルの重ね掛けって、同系統のスキル以外は効果にならんのか?」
「あ?」
「どういう事だよ?」
メンバーからの追及を受けたバリスが言うには……
「あ、いや……例えば、【気配察知】と【魔力察知】を重ね掛けすると、どちらもレベルが上がり易くなるんだろ?」
「『ワイルドフラワー』のお嬢さんたちからの情報だと、そうらしいな」
「で、な……例えば【魔力察知】と【魔力操作】を重ね掛けしてたら、どうなんのかな――って思ってよ」
実を言えば、麻雀の順子と刻子からの連想なのだが、バリスもそんな事まで喋るつもりは無い。
「……効果の方向ではなく、使用する力の種類を揃えるのか……?」
「……試してみても、別に悪くはなさそうだな」
「確かに……使役アーツの育成にも絡んできそうだし……これも検証に加えた方が良いのか?」
「ただな。俺は一応斥候職だから【魔力察知】と【気配察知】を揃えちゃいるが、さすがに【魔力操作】までは持ってなくてな」
「あぁ、そっちは俺が対応しよう。二つともキャラクリの時点で取得している。……尤も、【魔力操作】は補助スキルとばかり思っていたから、あまり積極的に育てようという気にならなかったんだが……」
実はこれ、大抵のプレイヤーが持つ共通認識であったりする。補助スキルとは言えレベルを上げておいた方が有利には違いないのだが、スキルポイントもスキル枠も無制限では無い事情から、他のスキルが優先される結果、毎回のように後回しにされる事になっていた。
「使役アーツも魔力を使う事に変わりは無いしな。召喚は消費MPが多いのがネックだが、【魔力操作】が何か働いてくれるのなら、試してみる価値はあるな」




