第五十七章 ナンの町 5.「マックス」(その2)
やはり自分が取得した死霊術の事が気になるとみえて、バリスがマギルの方を向いて訊ねたのだが……
「死霊術な、結構癖のあるアーツのようだぞ」
解放されたのが一番遅い上に、アンデッドに会う事自体が多くないためか、死霊術に関しての情報はまだ少ない。しかし、その状況でも既に、死霊術が他の二つに較べて癖のあるアーツだという事が判明していた。
「まず、住人の死霊術師がスケルトンをサーバントにして連れ歩いている……って教えてもらったんだが……これは俺たちが確認したネタだからな。……黙っていたが」
とっておきのネタという顔で教えてくれた召喚術師の様子を思い出すと、マギルも微妙な表情になるのを禁じ得ない。他のメンバーも同じだったとみえて、その話はスルーして先を促す。
「……他には?」
「あぁ。死霊術では、他の二つの使役アーツとは違って、未契約の死霊と会話ができる。情報収集という点では便利なアーツだな」
「おぉ……タクマ情報の通りかよ」
「だったら、斥候系のプレイヤーで死霊術を取るのが増えるんじゃないか?」
斥候の意見は端から聞いていても尤もなもののように思えたが……
「そう簡単な話じゃない。まずな、アンデッドというだけあって、基本的に陽光下での活動にはペナルティがかかる。俺たちが会ったサーバントのスケルトンも、昼間っからマントとフードを被っていたろう?」
「そう言えば……」
「使い所を選びそうな使役獣だな……」
「まぁ、これについては術者やアンデッドのレベルが上がればどうにかなるんじゃないかって予想されてるが……これも確証がある訳じゃない」
「あの運営のやる事だしなぁ……」
「いや。運営的な視点で言うなら、使役職三つに差が出るような事はしないんじゃないか?」
「それについては後で触れるとして……続けるぞ? 死霊と話ができるとはいっても、意味の通った会話が成立するとは限らんらしい。焦点の合わない目をして意味の通らない事をブツブツと呟いていたり、怨みがましく誰かの名前を繰り返していたり……」
「うわぁ……」
「それは……精神にくるものがあるな……」
「意味の通った会話ができたらできたで、頼まれ事だったりな。まぁ、クエスト扱いになるらしいが……」
「「クエスト!?」」
「あぁ。死霊術師限定の小クエストが結構あるみたいだ。日中の活動に制限が掛かる死霊術師への、救済措置の一環じゃないかって言われてるようだな」
「それで経験値とかを稼ぐのか……」
「だが……最初からソロでの活動を前提にしているガチの使役者勢はともかく、俺たちみたいにパーティを組んでると、勝手にクエストの受注なんかできんぞ?」
「そこは運営も考えたらしくてな、死霊相手のクエストは、時間制限の無いものがほとんどらしい。しかも、複数のプレイヤーが同じクエストを受注できる。言ってみれば登録制で、その中でクエストを達成した者だけが報酬を得る仕組みらしい」
「あぁ……それだと、時間に縛られる事は考えなくても良いのか……」
魔術師の話が一段落ついたところで、斥候が他の二人の顔を見回す。
「で? そっちの二人は何かあるか? 俺の方はとんと伝手が無くってな」
そう言うバリスに答えたのは、回復役の僧侶ウィリスであった。
「マギルが言った内容とほとんど同じだな。あとは、βテストとかなり違うらしいって事を聞いたぐらいだ」
「βテストと違う?」
「あぁ。大幅に改良されているらしい。ただ、βプレイヤーの使役職はごく少ないそうなんで、はっきりした事は言えんそうだが。……何でも、βテストの使役職は不遇過ぎて、本番では転職する者が続出したって話だな」
「あぁ、それは俺も聞いた……というか、βテストの使役職はモフモフ党じゃなかったろ? 今の使役職とは本質的な部分で違ってると思うぞ?」
「だな。あとは……従魔術師の中に後付けで召喚術を取得した剛の者がいるらしくて、色々と検証が進んでいるらしい」
「あぁ……それについちゃ『ワイルドフラワー』のお嬢さん方からの情報もあったな。三つの使役術全てを使える住人の使役術師とか……」
タクマのリアフレもそうだという事までは聞かされていないらしい。
「……俺が聞いた内容も同じようなものだ。一つ付け加えるとすれば、現在までに確認された死霊――盗賊や動物の死霊もいるようだが――の多くが、攻略組に殺された者だという事だな」
「あぁ……そのせいで攻略が進まないんじゃないかって叩かれていた件な……」
壁役の言葉に相槌を打った斥候であったが……




