表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/885

第六章 ナンの町へ 5.盗賊退治

 イーファンの宿場を出た一行は、ナンへ向かう街道を徒歩で進んで行った。



「そろそろ人里を離れたな。シュウイ少年はクロスボウを出しておいた方が良いぞ」

「ボルトケースは腰に付けて、クロスボウは肩に掛けておくか、背中に背負(しょ)っておくんだね」

「はい」


 言われたとおりにクロスボウを左の肩に掛けておく。僕は右利きだから、こう掛けておいた方が便利だからね。現実とは違って、ベルトがずり落ちてくるような事は無い。ゲームって都合良くできてるなぁ。


 そろそろモンスターの活動領域だというので、【気配察知】と【虫の知らせ】、ついでに【嗅覚強化】を起動しておくと、早速【虫の知らせ】が反応した。



「ケインさん、この先に何かがあるようです。【虫の知らせ】が反応しました」

「もうかい?」

「便利だな、そのスキル」

「便利なのはシュウイ君の方だと思うけどね」


 少し行くと、馬をつけていない馬車が道を塞いでいた。【気配察知】と【嗅覚強化】が、周りに潜んでいる気配を報せてくる。


「お~い、手伝ってくれぇ~」

「どうしたんだ?」

「ゴブリンに襲われて逃げてきたんだが、馬が外れて逃げちまった。せめて馬車を道の脇に寄せたいんだ」


(「ケインさん。馬車の中に二人、右手の茂みに二人、左の木の陰に二人、その後ろの木の上に一人。多分木の上にいるやつは弓を持ってます。それから、ゴブリンの臭いはしません」)

(「判った。弓使いは私がやる」)

(「じゃあ、右の二人は僕が」)

(「他の皆もいいな?」)

( 「「「「OK」」」」)


「それは大変だったな。ちょっと待ってくれ」


 そう言うとケインさんはのんびりと肩に掛けていた荷物を下ろした。僕もそれに(なら)う。いやぁ、さすがにトッププレイヤーの行動は勉強になるなぁ。さて、僕も準備しておくかな。


 左手奥の木から弓使いがもんどり打って落ちてきた。きっとケインさんの風魔法だろう。すかさず僕も右手の茂みに隠れている二人に【腹話術】をかける。


(「後ろだよ」)


 慌てて振り返った盗賊の後ろ首に手裏剣を飛ばして……二丁上がり。残りは他の人たちが()ってくれたみたいだね。気配が無くなった。


 ポーンという電子音が聞こえてウィンドウが現れたので、内容を確認する。


「おおっっ♪ スキルが五つも増えてる」


 パーティメンバーが(たお)した相手のスキルも確率で入るのかぁ。美味しい仕事だったなぁ。増えてるのは……



【お座り】相手のレベルが自分の二倍以下の場合、相手を十秒間お座りさせる。ただし、Lv1ではお座りしている相手を攻撃する事はできない。相手が複数でも発動する。


掏摸(すり)】相手が持つアイテムをランダムで一つ、気付かれないまま入手できる。ゲーム内日数で五日以内に再使用した場合、プレイヤーがイエローネーム化する。イエローネームは教会で懺悔して十万G以上寄進すれば解除できる。


【イカサマ破り】イカサマを見抜く。Lv3以上になると、相手のイカサマを失敗させる。


【反復横跳び】反復横跳びが上手くなる。育てると、サイドステップによる回避がパッシブで可能になる。


【日曜大工】本格的なものは作れないが、簡単なものなら大抵作れる。



 うん。なかなか良さそうなラインナップだね。



 シュウイがスキル欄を見て悦に入ってる頃、「黙示録(アポカリプス)」の面々はちょっとした騒ぎになっていた。



「……何だ、この装備品の山は……」

「所持金もアイテムも丸ごと残していった感じね……」

「アイテムバッグまで落としてるなんて……」

「なぜ、こんな事に?」

「決まってらぁ。シュウのやつしかいねぇだろうが……」

「ナントの店に装備品を売ったと言っていたが……こういう事か」

「お得意様って言ってた意味が判ったわね……」

「肝心のシュウは何してんだ?」

「……何か凄く喜んでるみたいね」

「あ、冷静に盗賊の遺品(ドロップ)を集め出した」



 盗賊が落とした遺品(ドロップ)を回収して皆の方を振り返ると、何か変な顔をしてこっちを見ている。何かあったのかな?



「どうかしましたか?」

「あ~、いや、この装備品なんだが……」

「あ~、パーティメンバーにも【解体】と【落とし物】の効果は適用されるみたいですね」

「やっぱり君のスキルか……」

「エレミヤの【アイテムボックス】があってよかったぜ……」



・・・・・・・・



 その頃運営管理室では、モニターを見ていた若いスタッフがチーフである木檜(こぐれ)に声をかけていた。



「チーフ……【解体】と【落とし物】の効果はパーティメンバーにも適用されるみたいです。盗賊たちのドロップが凄い事になってます」

「まぁ、考えてみれば不思議ではないな。パーティに入ってない相手から【落とし物】のお裾分けを貰ってたんだから」

「それにしても……これじゃどっちが追い剥ぎか判りませんね」



・・・・・・・・



 同じ頃、礼拝堂では死に戻りの五人(・・)が力無く突っ伏していた。



「PKの掲示板に載ってたのはこういう事か……」

「身ぐるみ剥がれて、スキルまで盗られたよ……」

「無一文でどうしろってんだ……」

「NPCの三人は復活できなかったのか?」

「判らん」

「……とにかく何とかして拠点まで戻るぞ。それから一件を裏掲示板に流す。早く警報を出しておかんと、被害が拡大する一方だ」



 いつしかシュウイは悪堕ちプレイヤーたちに災害扱いされていた。

「スキルコレクター」はレアスキルの蒐集に意欲的なユニークスキルですが、斃した相手から常にスキルを奪う訳ではありません。ただ、斃した相手がPKや盗賊プレイヤーの場合は、強奪の確率が若干上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] スキルと持ち物全部持っていかれる悪人達の会話が面白い。裏掲示板があるのが本格的でGOOD。死に戻った人たちの会話があるからちゃんとゲームになっている。そういった工夫がいい。 [気になる点]…
2023/08/11 21:28 ただの小説好き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ