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第五十五章 【迷子】騒動 4.スーファンの宿場町(その2)

 宿場町の飯屋で昼食を摂ったシュウイは、今後の活動について考えていた。


 この宿場町――スーファンというらしい――に飛ばされたのは、ある意味では千載一遇(せんざいいちぐう)の好機である。可能な限り情報と物品の収集をしたいところであるが、【迷子】のアンドゥコマンドでトンの町に戻るためには、今日中に迷い込んだ場所に戻っていなくてはならない。



「……となると、遠出はできないし、時間のかかりそうな事はできないな……」



 時間制限が無ければ、シュウイにはやってみたい事があった。トンの町防衛戦の時に共闘したホビンたちの村は、確かトンの町の北西方向だと言っていた。ここスーファンの宿場町はトンの町とペイの町の中間点にあるらしいから、上手くいけば彼らと再会できるのではないかと考えていたのである。しかし、本日中にスーファンに戻るという条件があるなら、時間内に村を探し出せる可能性は低くなる。



「久し振りにガワンとも会ってみたかったけど……まぁ、時期尚早って事だよね」



 アンドゥで戻るという手段を捨てれば、街道を通ってトンの町に戻るという選択肢も無くはない。ただし、トンの町とイーファンを結ぶ馬車の定期便は無いらしく、戻るなら徒歩という事になりそうである。



「前人未踏で距離も判らない道を一人で歩くとか……あり得ないよね」



 となると、シュウイに選べる選択肢は多くない。



『シル、適当なところで軽くモンスターを狩ってみようか?』



 シュウイの提案にシルが(うなず)き、では狩りに出かけようかとしたところで、シュウイに声をかける者があった。



・・・・・・・・



「……薬草の採取ですか」



 シュウイに向かって〝あなたは冒険者さん?〟と声をかけてきた老婦人の依頼は、薬草を採って来てはもらえないかというものであった。いつも依頼を出している冒険者が所用で町を離れているため、薬草が得られずに困っているのだという。

 ちなみにSRO(スロウ)では、冒険者ギルドを通さずに住人(NPC)から直接に依頼を受けても問題は無い。ギルドの貢献ポイントには反映されないが、中抜きが無い分、貰える報酬は少し高かったりする。


 そして今、シュウイの目の前には半透明のウィンドウが浮かんでいた。



《採取依頼を受けますか? Y/N》



(う~ん……これって、クエストだよね? ……事故的に飛ばされてきた僕が受けても良いのかな……?)



 しばらく考えていたシュウイであったが、駄目ならこんなクエストは最初から発生しないだろうと考え直して、老婦人の依頼を受ける事にする。


 ――その裏で、運営管理室の面々が頭を抱えているなどとは夢にも思わずに。


 教えられた生育場所は少し遠く、普通なら今日中に戻って来るのは難しいかもしれなかったが、シュウイには【疾駆】というスキルがある。全力で疾走すれば、余裕で往復できる筈だ。



「解りました。お引き受けします」



 シュウイはウィンドウのYをタッチしながらそう答えた。



・・・・・・・・



 今日中に採集クエストを終わらせてスーファンの町に戻らないと、【迷子】のアンドゥ機能でトンの町に戻る事はできなくなる。それを懸念したシュウイは、余計な面倒は御免とばかりに【疾駆】スキルで突っ走る。幸い、目的地まで脇目も振らずに突っ走ったのが功を奏して、ボスクラスのモンスターと出会う事は回避できた。

 モンスターとの遭遇は可能な限り減らしたシュウイであったが、それでも律儀に絡んでくるモンスターはいた。サンドウルフというオオカミ型のモンスターである。毛皮が砂色で、保護色で地面に(まぎ)れて襲って来る。面倒なモンスターではあったが、既にギャンビットグリズリーやミミックジャガーをソロで狩っているシュウイにしてみれば、それほど脅威だとは思えない。重ね掛けした警戒スキルに、万一の場合はシルの【力場障壁(バリアー)】まであるのだ。往復で二つ程の群れを蹴散らして、シュウイは首尾良く薬草を採集して持ち帰ったのだが……。



 持ち帰ったところで、クエストの続きが表示された。

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