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第五十五章 【迷子】騒動 3.スーファンの宿場町(その1)

少し短いです。

 その頃、シュウイはやっと、自分がトンの町ではない場所に飛ばされた事実に気付いていた。



「何かおかしいと思ったんだよ……【迷子】が発動してたのか……」



 ブツブツと(つぶや)くシュウイであったが、問題は帰り道である。



「来た道が判らないんだから、帰り道が判る(わけ)が無いよな……けど、ここの運営の事だから、きっと何か打開策はある筈なんだよな……」



 ここの運営が、一方的に非難されるようなスキルを作る(わけ)が無い。

 ……と言うか、ユーザーに弱みを握られるような、そんな手抜かりをするほど甘い連中ではない。

 運営に対するかなり(いびつ)な形の信頼感――ほぼユーザー全員が共有している――に基づいて、シュウイは【迷子】のヘルプに隅から隅まで眼を通す。



「あぁ、やっぱり……アンドゥのコマンドで、その日のうちなら元の場所に戻る事ができるんだ」



 有用と言うには癖のあり過ぎる【迷子】であるが、いつの間にやらレベル3まで上がっている以上、今後使う場面が来ないとも限らない。そう思ってシュウイは(くだん)のスキルについて、更にヘルプファイルを読み込んでいく。



「ふぅん……デフォルトの設定だとアクティブスキル扱いだけど、長期間レベル0のままに放って置かれると、勝手にパッシブスキルに変わるのか……スキルホルダーの気付かないうちに発動して、どこかに飛ばす……って、運営も()くこんな酷いスキルを作ったな……」



 拾ってから一度もこのスキルに触れなかったため、いつの間にか設定がパッシブに変化したらしい。なのにこれまでスキルが発動しなかったのは、今まで無目的な散策をしなかったのが原因のようだ。



「……今回は当てもなくブラブラと歩いてたからな……スキルの発動条件を満たしたのか……」



 今後同じような目に遭う事は願い下げなので、シュウイは設定をアクティブに変更する。これで、迷子になりたいと思った時だけ【迷子】スキルが発動する筈である。そんな時がいつ来るのかと突っ込まれそうだが、敵の追撃や尾行者を()く時には重宝しそうだ。


 これであとは、アンドゥのコマンドを実行すれば、今日中なら飛ばされる前の場所、すなわちトンの町に戻れる筈だ。



「……ただし、リドゥのコマンドは無いから、もう一度ここへ来ようと思っても、それは無理って事か……だったらこのチャンスを生かして、買い物や情報収集に(いそ)しむ方が良いよね」



 こういうところは案外と抜け目の無いシュウイであった。

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