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第五十三章 SRO特殊鋼事始め 2.西の採掘場(その2)

「……テムジンさん、どうやら三種類とも、葉を焼いた灰を触媒に使うみたいです」

「そうか……しかし、シュウイ君がいてくれて助かった。君が気付いてくれなかったら、またしても無駄足を踏むところだった……」

「抽出ではなく、鋼への添加に必要ってあたりが(ひね)くれてますよね」

「確かにな。一歩進めさせてから足止めを喰らわせる。なまじ最初からできないよりも、フラストレーションはずっと大きいだろう」



 二人は運営への呪詛を口にしながら、三種類の葉を集めていく。幸いに、SRO(スロウ)では採集に特別なスキルは必要としない――ただし、採集物の品質は、スキルを使用した方が高くなる。だが今回のように、単に燃やした灰を使うだけなら、土など不純物の混入に注意すれば、品質には余り(こだわ)る必要が無かった。それ以前に、シュウイの【錬金術】で土などは【分離】できるので、二人は余り気にせずにさくさくと葉を回収していく。



「……考えてみれば、採集自体には特別なスキルを必要としないって仕様が、【錬金術】でしか判らない情報がある事の伏線なんですね……」

「……成る程……上質な素材を得るのに専用のスキルが必要なら、情報を得るのにも然るべきスキルが必要という(わけ)か……(しゃく)に障るが、道理ではあるな……」



 ブツブツと文句を垂れながらも、触媒用の草木を集める二人。ある程度の量が集まったところで、いよいよ鉱石の鑑定に入る。先に鑑定をやれば良さそうなものだが、すっかり草木に注意を奪われてしまった結果である。



「では……あ、当たりです」

「やはりそうか……含まれているのは?」

「素直にクロム、モリブデン、ニッケルですね。ここで触媒と全く違う元素が含まれていたら、笑うしか無いんですけど……」

「自分なら、笑うより前にキレるかもしれないな。まぁ、そうでないのは幸いだった」



 シュウイが【錬金術】で鑑定したところ、次のような結果が表示されていた。



【素材】低品質の鉄鉱石母岩 品質D レア度1

 低品質の鉄鉱石を含む。鍛冶スキルの【選鉱】を使用すると、低品質の硫砒鉄鉱を得る事ができ、それを焼く事で鉄がとれる。ただし、この方法では副産物として亜砒酸が発生し、人体と環境に悪影響を与える。また、硫砒鉄鉱以外の物質を得る事ができない。

 特殊スキル【分離(特殊)】を使用すると、砒素・鉄・クロム・モリブデン・ニッケルを抽出する事ができる。ただし純粋な元素として抽出するには、中級以上のスキルが推奨される。初級スキルを用いた場合、不純物の混入を防ぐ事ができない。



「う~ん……テムジンさん、僕だと初級スキルしか使えないので、不純物の混入が避けられないみたいです」

「問題無い。自分にしても、最初から特殊鋼の精製なんかできる(わけ)が無いからな」



 初心者だからこそ、高品質な素材を使って技倆の不足を補う必要があるような気がしたシュウイであったが、多分SRO(スロウ)では、初心者は初心者向けの材料を使うような仕様になってるんだろうと勝手に納得する。



「じゃ、一度ここで分離してみます?」

「……いや……分離した後で、風に吹き散らされたりしたら最悪だ。品質の悪い母岩を選んで、アイテムバッグに放り込もう。幸い、自分のアイテムバッグの容量はかなり大きい。含有量が低いにしても、そこそこの量は採れるだろう」

「……ここの運営なら、突風くらいの悪戯は仕掛けていそうですね。解りました。低品質の母岩を選んで持ち帰りましょう」



 ()くしてシュウイとテムジンの二人は、鍛冶師視点では役に立たない屑鉱石の採集に熱中したのである。

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