第五十二章 休日(土曜日) 3.とあるファミレス(その3)
「……成る程……運営の狙いか……」
この件に関するナントの分析を蒐一から聞いて考え込む三人。
「確かに、新規参入組の反応は問題ね……」
「あぁ、ナントさんの言うとおりの結果になりそうだよな」
眉根を寄せて考え込む要と匠を不思議そうに見ていた茜が口を開く。
「ねぇねぇカナちゃん、黙っていたら駄目なの?」
「お前な……事が明らかになった時が怖いだろうが」
「黙ってれば判んないんじゃない?」
あっけらかんと身も蓋も無い茜の指摘に何か反論しようとして……その口を閉ざして考え込む二人。
「それは……そうか……」
「確かに、それも一つの解決法よね……」
臭いものには蓋、と言わんばかりの刹那的かつ非生産的な解決ではあるが、事を荒立てないという点にかけては最有力な解決法でもある。う~んと考え込む二人を見て、蒐一が状況を整理してみてはと提案する。
「まず、公表する場合の利点だけど……僕らには何もメリットは無いよね」
「まぁ……そうだな」
「で、他のプレイヤーにとってのメリットだけど、要ちゃんたちが問題にしてるのは、住人たちとの交流促進の件でしょ? それなら他の情報で既に指摘されてるし、謝罪称号の件は不要じゃないかな?」
蒐一の指摘に考え込む二人。確かに今更未確認情報を上げても、状況が大幅に改善されるとは思えない。
「あと、この件を公表した場合、際限無く次の情報を求められそうな気がしない?」
「あ~……」
「言われてみればそうね……」
東の泉に無傷で到達したなどと掲示板に上げた日には、いつ、誰が、どうやって、と芋蔓式に質問が殺到するのは目に見えている。黙秘すれば人でなし扱いだろう。
「それに、多分だけどこの称号って、即効的なメリットは無いよね? ご新規さんにとっても、コストパフォーマンス的に美味しくないんじゃない?」
「それもそうか……」
「有益なものと誤解されても困るわね……」
ここまで黙って三人の分析を聞いていた茜が、別の視点から一石を投じる。
「ねぇねぇ、蒐君が成功した話を書くから誤解するんじゃない? 誰かが失敗した話を上げたら好いんじゃないかな?」
思ってもみなかった提案を聞いて茜の方に向き直る三人。
「確かに……」
「茜ちゃんの言うとおりね」
「成功譚より失敗談の方が教訓的ではあるよね」
ただし問題は……
「誰が失敗に挑むのか、だよな……」
「変な言い方だけど、そのとおりね」
「あ、そう言えばナントさん、ケインさんたちに相談するって言ってた」
「『黙示録』に?」
「だったら私たちだけで考えて勝手に動くよりも、相談してからの方が良いわね」
「別に急ぐ必要は無いと思うし~」
斯くして、この問題はあっさりと先送りが決まったのである。
「色々と引っ張り出してくるよな、蒐は」
「蒐君、他には~?」
「あ、バランド師匠の弟さんがナンの町にいるんだって」
蒐一が最後の爆弾を投げ込んだ。