第五十二章 休日(土曜日) 2.とあるファミレス(その2)
自分の外様っぷりに落ち込んだ蒐一を再浮上させるべく、幼馴染みたちが声をかける。
「ほらほら蒐君、機嫌を直して」
「ほらぁ~、パフェ、一口あげるから」
「……うん、ありがと」
優しい慰めの言葉が奏功したのか、はたまた甘いものにつられたか、ともあれ蒐一が復活したところで、匠が話の本筋を持ち出す。
「それで、蒐、そっちは何か大ネタがあるんじゃないのか?」
「……何で判るのさ?」
「いつからの付き合いだと思ってんだ? お前の様子を見てりゃ、何か相談したい事があるんだろうなって事ぐらい判るわ」
さすが匠は話が早いなと思いつつ、昨日のログインで拾ったネタを持ち出す蒐一。とりあえず順番に報告しよう。
「じゃ、最初はテムジンさんと話した件からね」
「……おい待て、蒐。最初は――って事は、複数あるのかよ?」
「ま、聞いてれば判るよ。とりあえずテムジンさんの話から」
匠の突っ込みを軽やかに――匠当人の気分は重くなったようだが――あしらって、まずはテムジンと訓練場に行った件について報告する。
「……へぇ、テムジンさん、弓のスキルを得られそうなのか」
「抑は匠がきっかけなんだろ?」
「きっかけっつーか……チャットで話している時にポロっとな。物凄い食い付きっぷりだった」
「みたいだね。ま、とにかくコーチの人から指導を受ける事にはなったみたいだから、何日か行けばスキルを貰えるんじゃないかな」
「む~、弓かぁ~」
「あ、茜ちゃんだと難しいかもしれないよ? 僕ら異邦人が上手く弓を扱えないのは、筋力の数値が影響してるみたいだから」
「普通は弓だと器用度の方が重視されるものね。盲点よね」
「あ、命中率には器用度が関わってくるみたい。ただ、ある程度の筋力が無いと、弓を上手く引けないって事みたいだね」
「んじゃ、やっぱ茜はきついか」
「む~……」
「テムジンさん、地味に体力はありそうだしね」
「うん。だから却って突っ伏してた。噂に惑わされずに素直に弓を引いてれば、って」
「うわぁ……」
「掲示板の、っていうか情報過多の弊害よね……」
弓スキルの話題が落ち着いたところで、蒐一は次のネタを披露する。
「万力鎖はともかく……稀少金属に特殊鋼か……」
「蒐君、相変わらず突っ走ってるね~」
「茜ちゃん、その言い草はおかしいよ。この件はテムジンさんが持ち出したんだから」
自分は無関係だと力説する蒐一であったが、幼馴染みたちの見解は異なっているようである。
「いや、蒐の【錬金術】が無いと始まらない話だからな?」
「そうね……巡り合わせというのか、引きが強いわよね」
「あ~……こいつは昔っからなぁ……」
善きにつけ悪しきにつけ、妙に当たりを引くところが蒐一にはあった。大方、今度の一件もその伝だろう。
「まぁ、その話は措いといて、質の悪い鉱石と微量元素の事は見過ごせないわね」
「だな。運営が考えそうなトラップだ」
「ねぇねぇ蒐君、テムジンさんと鉱石掘りに行くの?」
「うん。今日にでも」
「へぇ……結果が判ったら教えてくれるか?」
「うん。けど、これも公表するかどうかは慎重にしないとだよね」
「……蒐君、『これも』っていう事は、他にも公表を躊躇うような報告があるのね?」
時宜を得た要の発言に、蒐一はナントとの話し合いの件を口に出す。