表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/877

第四十九章 篠ノ目学園高校(金曜日) 5.放課後(その3)

 祝福称号の方はしばらく放っておくと決めた(しゅう)(いち)は、次に謝罪称号について問いを放つ。



「ま、それは良いか。だったら謝罪称号の方は?」

「こっちは更に難物ね……というか、イロモノっぽいわね」

「でもさ、(かなめ)ちゃん、精霊さんたちとの取引優待っていうんでしょ?」



 悪いものじゃないんじゃないと言う(あかね)に、溜息を()きつつ(たくみ)が突っ込みを入れる。



「……お前な……精霊なんてどれだけ見つかってると思うんだ。滅多に会えるもんじゃないんだぞ?」

「……いえ、だからこその称号なのかもしれないわね」



 ()(げん)そうな三対の視線に、思うところを開陳(かいちん)する(かなめ)



「あくまで思いつき程度だけど……ひょっとしてその称号を持っていると、精霊に出会う可能性が高まるのかも知れないわ」

「……精霊が寄って来るってのか?」

「というより、無視される事が減るんじゃないかしら。謝罪という点を考えた場合だけど」

「う~ん……あり得なくは無いか……」

「どちらにしても、これも運営の方針に従ったものでしょうね」

「……住人たち(NPC)との交流促進ってやつ?」

「多分ね」



 これまでの流れに(かんが)みれば、(かなめ)の説明にもそれなりの説得力がある。



「……だったら、この話も掲示板に上げた方が良いのか?」

「それはちょっと待てよ、(たくみ)。取引っていう事を考えると、先にナントさんに相談してからの方が良いような気がする」

「あ~……それはありかもな」

「うんうん」

「だったら、今日明日にでもナントさんに報告してもらえる? (しゅう)君」

「うん。今日にでも店に行ってみる」



 (しゅう)(いち)の話が一応とはいえ(まと)まったところで、今度は他の三人が――正確には彼らのパーティメンバーが――拾ったという使役スキルの事に話題が移る。



「……【従魔術】に続いて、【召喚術】と【死霊術】も拾えたんだ……」

「……言っとくけど、俺が拾った(わけ)じゃないからな?」



 (たくみ)に向かって、お前も結構やらかしてるじゃないかという視線を向けてくる(しゅう)(いち)。そしてそれを牽制する(たくみ)。女性陣は我関せずの態度を決めているが、彼女たちのパーティメンバーも【召喚術】を拾っている……どころか、「使役術師」を名告(なの)老婆(NPC)と出会ったりしているのだから、無罪を主張するのは筋違いである。



「……結局、使役系三アーツの全てが後付け可能って事か」

「スキルオーブで取得できないんじゃないかって言われてたけど……こんな抜け道があったとはね」

「でもさ、(かなめ)ちゃん、これって期間限定だとか言ってなかった?」



 新規参入者へ向かって、いきなり使役職への転職が可能になるようなイベントを出すとは考えづらいという見解については、既に(しゅう)(いち)にも伝えてある。



「それはそうだけど、逆に言えば、今後も同じようなイベントがあると言っているようなものじゃない?」

「へ?」

「どういう事なの?」



 頭の上に?マークが浮かんでいそうな(たくみ)(あかね)を尻目に、(しゅう)(いち)(かなめ)に確認する。



「第一陣だけを優遇する(わけ)にはいかない筈……って事で良いのかな? (かなめ)ちゃん」

「そういう事ね」

「……あ」

「そっかー……」

「だったら、この件は公表するつもりなの?」

「問題はそこよね……」



 今回限りの話であれば、下手に公表すると取得できなかった者の恨みの矛先が向く可能性がある。しかし、今後同じようなイベントがある可能性を考えると、黙っている方が(まず)いかもしれない。(かなめ)の推理が当たっていれば、新規参入までまだ四日間ほどのチャンスがあるのだ。



「少し様子を見て、どこからも情報が上がらないようなら報告した方が良いのかも……」

「けどよ(かなめ)、お前の予想が当たってたらチャンスは残り四日間だけだろ? のんびり待ってる余裕は無いんじゃね?」

「それもそうね……早めに報告した方が良いのかしら……」

「じゃ、(かなめ)ちゃん、宜しく」

(しゅう)……お前な……」

「えぇ。うちのリーダーに任せるわ」

「「「…………」」」



 にこやかに笑う(かなめ)に対して、何も言えない三人であった。

次話からストーリーは第二部に入ります。あのキャラが久々の登場です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ