第四十九章 篠ノ目学園高校(金曜日) 4.放課後(その2)
「「『ラモン』?」」
要が蒐一たちを案内したのは、小洒落た構えの店であった。ただし、蒐一も匠も今まで入った事のない店なので、何が出てくるのかは判らない。
「……ケーキバイキングとかじゃねぇだろうな?」
健啖とは言え、甘いものはそれ程得意でない匠が警戒の声を漏らす。
「残念だけど違うわよ?」
「入ってみれば判るから!」
女性陣に急かされるようにして、少年たちは店の扉をくぐる。
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「へぇ……フルーツパーラーなんだ」
「やっぱり甘いもんじゃねぇかよ……」
「大丈夫よ。この店、梅干し茶漬けとかも置いてるから」
「「梅干し茶漬け!?」」
梅とは要するにプラムなのだから、フルーツパーラーに置いてあるのはおかしくない。そして、この店がフルーツを用いた軽食を扱うのであれば、確かに梅干し茶漬けもその範疇に入る……
「いや、それはそうかもしんねぇけど……」
「場違い感が拭えないよね……」
「あら? でも匠君的にはありがたいでしょう?」
「そりゃ、まぁ、そうだけどよ……」
「……あ、そうか。この店って、甘いものが苦手な人でも苦痛にならないようにしてるんだ」
甘党に連れられて入店する羽目になった辛党を想定したレパートリーだと気が付いて、店の戦略に感心する蒐一。意外に気の廻る少年である……間違っても女子力が高いなどと口走ってはいけない。
ともあれ、銘々がオーダーを確定して――匠の注文は梅干し茶漬け大盛りに干し柿だった――注文の品が届いたところで、会話の内容はSROの事に移る。
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「む~……そんな攻略法があったなんて……」
蒐一の水汲みクエストの顛末を聞いて驚き呆れる茜たち。
「……また、妙な事に巻き込まれてるよな」
「蒐君らしいとは言えるわね」
「好き勝手言ってくれるね……まぁ、大した事はなかったけどさ」
(((大した事なかったんだ……)))
「……けどよ、蒐、称号二つってのは良い貰いもんじゃねぇか?」
「それだけど……称号って何の役に立つんだ? 祝福称号は何かの鍵になるみたいな事を、泉の精霊が言ってたけど」
「う~ん……このクエストの事は聞いた事があるんだが……」
「関連しそうなクエストの事を聞かないのよね」
「今のところは不明って事?」
「あぁ。ナンの町では水汲みクエストなんか出てこなかったしな」
「水汲み以外のクエストかもしれないじゃん」
「それも含めて、可能性のありそうなクエストが知られていないのよ」
匠と要の説明に、それならそれで良いかとあっさり納得する蒐一。どうせ棚ボタで拾ったような称号だ。スキルの関係で積極的な攻略はしづらいし、あっさりと放っておく事に決める。
祝福称号はそれで良いとして、次の問題は謝罪称号である。
本日20時、SROのサイドストーリー集を更新の予定です。
https://ncode.syosetu.com/n0486fe/
よろしければご覧下さい。