第四十七章 篠ノ目学園高校(木曜日) 2.昼休み
コミカライズ版、明日発売の予定です。
「ね~ね~蒐君、連休はどうするつもり?」
例によって屋上で弁当を使っている時に訊ねてきたのは茜である。
「あ、連休は僕、和歌山の祖父ちゃんとこ行くから。月火は普通どおり登校するけど」
「あら、だったら蒐君はSROお休みかしら?」
「うん。けど、気にせず先に進んで良いよ? 僕ももう少ししたらそっちへ行くし」
「お! マジかよ蒐! ランク上がったのか?」
「上がる予定……なんだけど、今日はアプデでログインできないから、確認できるのは明日かな」
「お~……やっと蒐君と一緒だ~」
「挨拶とか後片付けとかあるから、もう少しトンの町にいるけどね」
「早くおいでよ~」
「まぁ、もう少し待ってて……あ、そうだ。転移門ってどんな感じ?」
何気無く訊いた蒐一であったが、訊かれた三人の反応は見物であった。
「転移門……って、おいこら、蒐、どこで見つけた、ソレ?」
「へ? いやあの、僕が訊いて……」
「蒐君? 詳しい話を聞かせてもらえる?」
「お願い!」
友人三名に詰め寄られた――特に、にこやかな要が怖かった――蒐一は、夕べのギルドマスターの台詞を繰り返す羽目になるのであった。
「転移門か~」
「やっぱり実装されてたんだな」
「βテストの時に出てきたのか?」
「話だけね。βテスターたちが探し回ったけど、見つからなかったのよ」
「それをまぁ、あっさり見つけやがって……」
「待てよ匠、見つけた訳じゃないからな? 話を聞いただけだから」
「場所とか使用条件とかは教えてくれなかったの?」
「駄目だった。そのうち判るの一点張り」
「む~……意地悪なオジさんだ~」
「オジ……ギルマスが泣くぞ」
む~っと頬を膨らませている茜を微笑んで横目に見ながら、優雅に弁当を食べていた要が口を開く。
「まぁ、詳しい話は放課後にしましょう。今日は私の奢りよね? 蒐君」
「あ、それなんだけど、日を改めてもらったら駄目かな? 今日はちょっと匠に付き合わなきゃならないんで」
「匠君が何かしたの?」
「悪い! ちっとクエストで詰まってて、蒐に稽古をつけてもらうんだ」
両手で拝むようにして頭を下げる匠。
「あら、私は構わないけど……茜ちゃんは?」
「良いよ~」
「悪い! 今度何か奢るわ!」
あ~あ、安請け合いしちゃって……要ちゃんの目が光ったのに気付いてないのかよ……
「蒐君?」
「ん~ん? 何も言ってないよ?」
にこやかな微笑みでスルーする蒐一。対人スキルは何気に高い。
「それより、茜ちゃんや要ちゃんは何かあったの?」
「そうね……かなり有意義だったわね」
「魔法使いのお婆さんに弟子入りしたの!」
え……?
「……へぇ、使役術師の住人っているんだ……」
匠のパーティメンバーが【召喚術】と【死霊術】を拾った事は蒐一も聞いていたが、茜と要のパーティメンバーまで【召喚術】を拾った事は聞いていなかった。まして、使役術師の住人なんて者がいるとは、蒐一たちも驚くしかない。
「それじゃあ、要たちのパーティは全員が使役スキルを取ったのか?」
「えぇ。未取得だった二人が【召喚術】を取得したから……まだ仮免許だけどね」
「あ、結局【死霊術】は取らなかったんだ」
「えぇ……やっぱり抵抗があるみたいなのよね」
「う~……アンデッドは嫌~」
「そうかな……犬魂は結構可愛かったけど」
「犬魂?」
「あ、うん。犬の人魂」
「蒐君が言うくらいだから、本当に可愛いのかしらね」
「まぁ、【召喚術】を取ったんならそれで良いだろ。どうせ手遅れだろうし。蒐がトリプルで揃えてんだから大丈夫だろ」
「そうね。蒐君、期待してるわ」
「蒐君、ガンバ~」
「勝手な事を……あ、でも、そのお婆さんには会ってみたいかな」
「私たちは一応弟子って事になってるから、引き合わせてあげられるかもしれないわよ?」
「あ、だったらお願い」