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第四十六章 ナンの町 3.「ワイルドフラワー」(その2)

 二人の魔法少女が健気な決断をした「ワイルドフラワー」であったが、なぜか噂の死霊術師と召喚術師には出くわさない。掲示板を探してみても、問題の二人連れに出会ったという書き込みは――(こう)()となった「マックス」の例を除けば――なされていない。というか、マックスもこれに関しては今のところ沈黙を貫いているので、この情報は他所(よそ)に漏れてはいない。



「何か……レアキャラだったみたいね……」

「二人組だもんね……」

「こうなると……二人連れには(こだわ)らずに探した方が良いのかしら」

「ね、ねぇカナ、後日に廻すっていう選択肢は……」

「気になる事があるのよ。大型アップデートと新規参入者」

「あ……」

「大型アプデはともかく新規参入は……」

「いきなり使役職への転職が可能になるようなイベントを出すとは、確かに考えづらいかな……」



 カナの懸念を理解したメンバーたちは、少し気合いを入れ直して住民(NPC)たちを観察していくが……やはり見つからない。



「これって……サービス期間が終わったって事?」

「いえ……多分これは突発イベントの筈……だったら、期間がそこまで短いとは思えないわ。……ひょっとして場所が移動したのかもしれない」

「場所って?」

「レアキャラが出没する場所……要は狩り場ね」

「またも身も蓋も無い表現を……」

河岸(かし)を変える?」

「リーダー……」

「ねぇ、カナちゃん、どこが穴場なの?」



 狩り場なのか釣り場なのか。



「そうね……郊外に出てプレイヤーが狩りや採集をしそうな場所へ行くか……あとは……訓練場くらいかしら」

「訓練場?」

「使役職じゃないけど、あるパーティが訓練場へ行って住民(NPC)の教官に出会ったそうだから……」

「郊外か訓練場か……」

「残り時間的にみて、両方に行く余裕は無いわよね……」

「二択かぁ……」



・・・・・・・・



 結論を言えば、「ワイルドフラワー」は勝率五十パーセントの賭けを制する事ができた。召喚獣を使うなら街中よりも郊外だろうと判断して――運営側の良識に賭けたとも言える――それらしき場所を探したところ、召喚獣を連れて薪を集めていた老婆に出会ったのである……。



「そうかぃ、お前さんたちゃダズに会ったのかぃ」

「ダズさんって言うんですか? ヘルファイアリンクスを連れていた男の方でしたけど」

「おっきぃけど、すごくお行儀良かったの!」

「こら、セン」

「あ……良かった……です」



 口籠もりながら言い直したセンを孫を見るように――子供っぽいという意味なら誰しも異論は無い――微笑みながら、老婆は構わないと答える。



「なに、気安く呼んでくれりゃぁ良いさ。あたしゃバーバラって老いぼれだよ。年食ってる分若い連中――ダズはそろそろ壮年に差し掛かろうという年輩だったのだが――を知ってるだけさ。異邦人とはいえ、あんたたちみたいな若い娘が使役術を学んでくれるとはねぇ……」



 感無量といった風情で「ワイルドフラワー」の五人を眺めるバーバラ刀自(とじ)。その様子にふと違和感を覚えたカナが問いかける。



「使役系の術って、何か特別なんですか?」

「あぁ……あんたたちゃそういった事には無頓着なんだねぇ……。使役術は人外の者を使役する(わざ)だからね、昔はどうしても色眼鏡でみられたもんさ」



 そんな設定は初耳である。



「今でも年寄りの中にゃ、使役術師ってだけで身構える者もいるだろうねぇ……」



 (だい)()(こと)なので繰り返すが、初耳である。


 というか、バーバラ刀自(とじ)も若い頃は使役術師――なんと、三大使役術の全てを使えるそうだ――を志したばかりに大変な苦労をしたのだという。



「だから、あんたたちみたいな若い連中が使役術を使おうとしているのを見ると、つい放っておけなくてね」



 あれこれと指導しているうちに、何となく使役術師の領袖(りょうしゅう)のような立場に祭り上げられたのだと苦笑している。



「ここで会ったのも何かの縁だ。あんたたち、良かったらあたしの家に来て話を聞かせちゃくれないかい?」



 ポーンという電子音と共に、現れたウィンドウが運命を告げる。



《バーバラへの弟子入りクエストを受けますか? Y/N》



 全員が揃ってYをタップしたのは(けだ)し当然であった。

使役系スキルが後付けで取得可能な期間は、第二陣参入までの一週間だけです。しかも、各人一度だけしか取得の機会はありません。カナの用心は大当たりだった訳です。

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