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第四十五章 水汲みクエスト 5.水汲みクエスト~復路および管理室~

 無事に泉の水を汲み終えて――お詫びの印という事で、どこでも泉の水を出せる【霊水】というスキルまで貰った――シュウイは帰りの(みち)()いていた。

 モンスターたちには襲わせないので隠密系スキルは必要無いと言われ、できればモンスターたち()襲わない事をお願いされたので、シュウイは隠密系スキルを解除してみたのだが、こちらの姿が見えている筈のモンスターは、いずれも敵対的な反応を示さなかった。



「わぁ……これは楽だね」



 何だかんだでここまで結構な時間を費やしている。明るいうちにトンの町へ戻るつもりなら急がねばならない。()(かい)だの狩りだので時間を潰したくないシュウイとしてはありがたかった。



「さ、シル、少なくともモンスターハウスの中では面倒なちょっかいは出されないみたいだし、急いで戻ろうか」



 黙って(うなず)くシルの同意を確認すると、シュウイは足早に帰途に()いた。



・・・・・・・・



 運営管理室ではスタッフたちが、画面に映る事の顛末(てんまつ)に見入っていた。



「……木檜(こぐれ)さん、良いんですか? ……その、色々と……」



 複雑そうな表情で問いかけたのは(たい)()である。



「泉の精霊の判断だ。試験運用中のAIだからな、こっちから異論を唱える(わけ)にはいかん。それに、判断のプロセス自体は基本プログラムに沿ったものだ。今更これに手を加える(わけ)にはいかんというのは、ホブゴブリン……いや、ホビンの時に合意に達した筈だぞ?」

「解ってはいるんですが……」



 泉の精霊のAIは、自分のしでかした不始末の詫びに【霊水】というスキルを与えるべきと判断した。これはホビンたちが――杖術を教わった礼として――シュウイに魔法のスキルオーブを与えたのと同じく、基本ルーチンに(のっと)った判断である。



「まぁ謝罪の称号は、冒険者にとっては実際的な利益はあまり無いからな。それだけでは不足と考えたんだろう」

「それにしても……〝精霊の謝罪〟なんて称号があるんですね……」

「称号については、必要に応じてその場で創られるものもあるからな。メインAIが称号を与えるべきと判断したんだろう。この場合は称号というより、どっちかというと注意書きみたいなものだな」



 SRO(スロウ)内の称号に、特定のクエストを受けるための鍵となっているものがある事は既に述べたが、それ以外に突発的に与えられるネタ称号とでもいうべきものがある。これはSRO(スロウ)内でユニークな行動や業績を上げたプレイヤーに与えられる事が多いが、運営側に注意を喚起するためのタグのように使われるものもある。今回の「謝罪」称号はそれにあたるものだ――シュウイはまだ確認していないが。



「まぁ、色々と想定外ではあったが、今回のスキルと称号については納得できる範囲だろう。あのスキルは錬金術や調薬にも使える筈だしな」



・・・・・・・・



「う~ん……さすがにモンスターハウスの外のモンスターまで中立的にはならないかぁ……」



 自分を見つけて襲いかかってきたモノコーンベアを危なげなく一蹴すると、シュウイは警戒系スキルが示す反応を確認する。自分たちを発見していないモンスターからは中立的な反応が返ってくるが、こちらへ向かってくるモンスターは敵対的な反応を示している。



「う~ん……暗くなるにはまだ時間があるし……少し稼いでいこうか」



 シュウイはそう言うと、こちらへ向かってくるストームウルフの群れに対して身構えた。

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