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第四十五章 水汲みクエスト 2.水汲みクエスト~往路~

 師匠の命令とあらば否も応も無く、シュウイは東のフィールドに足を踏み入れた。



「はぁ……シル、お前だけが頼りだからね」



 シュウイの懐から顔を覗かせていたシルは、任せろと言うように(うなず)いた。(いささ)かも動じないその様子を心強く感じつつ、シュウイは歩みを進める。



「東の草原を真っ直ぐ突っ切って行けば判るって言われたけど……そんなんで大丈夫なのかな?」



 地図らしい地図も与えられずに放り出された格好のシュウイは、そこはかとない不安を感じつつも、指示の通りに草原を進む。と、早々に重ね掛けした警戒スキル――【虫の知らせ】【嗅覚強化】【気配察知】【イカサマ破り】の四つ――に反応があった。



「う~ん……泉の位置がはっきりと判らないし……少なくとも行く途中は、狩りで時間を取られるのは避けた方が良いかな……」



 東のフィールドのモンスターをソロで相手取る事を「戦闘」でなく「狩り」と考えているのを別とすれば、妥当で常識的な判断である。


 ともあれシュウイはそう判断すると、モンスターを迂回して先を急ぐ。隠密系のスキル――【地味】【擬態】【隠蔽】の三つ――を重ね掛けしているため、大抵のモンスターならやり過ごす事ができる。


 時折モンスターを迂回しつつ先を急いでいると、やがてシュウイの目前に現れたのは……



「『東の泉 この先十キロ』って……確かに『行けば判る』けどさぁ……」



 ご丁寧に矢印まで描かれた大きな看板であった。



 言いようのない脱力感を抱きつつも、看板の表示どおりに進むシュウイの目の前に、再び大きな看板が現れた。



《注意! これより先、モンスターハウス!》



「……し、師匠~っっ!」



 無人の草原にシュウイの絶叫が響いた。



・・・・・・・・



 腹を(くく)ったシュウイは杖を構えて先に進んだが、警戒スキル四つ重ねと隠密スキル三つ重ねの効果は絶大であった。わらわらと湧いてくるモンスターたちは事前にシュウイにその所在を察知され、なおかつモンスターはシュウイの正確な位置が掴めない様子でうろうろとするばかり。見る間にガンガンとレベルの上がる隠密系スキルに物を言わせて回避する。



(そりゃ、姿を隠してモンスターハウスを通り抜けたりすれば、隠密スキルのレベルが上がるのも当然だよね……)



 どうしても回避できそうにないモンスターは、吹き矢の毒と投石紐(スリング)で離れた位置から(たお)すので、他のモンスターにこちらの位置が露見する事は無い。お蔭で【暗器術】や【投擲】【飛礫(つぶて)】【狙撃】などのスキルの上がる事上がる事。


 サクサクとモンスターハウスを素通り……とまではいかなくても、(つつが)無く通過して進むシュウイの目の前に、またしても看板が現れた。



《東の泉 この先五百メートル》



 ここまでさして遅滞無く進んできたシュウイであったが、泉が近いという看板を前に気を引き締める。どうせこのゲームの運営の事だ、きっと泉にも何か厄介なモンスターを配置してるに違いない。



 彼の予想は半分ほど当たっていた。


 「厄介」の内容が少し予想から外れてはいたが。

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