第四十四章 篠ノ目学園高校(水曜日) 3.放課後~親水公園~(その1)
その日は天気も良かったので、蒐一たちは放課後、親水公園へと向かっていた。
「このところ間食ばかりだったから、丁度良いわね」
「うん。食べてばかりは不健康」
「……嬉々として食ってなかったか……?」
「匠君? 何か言ったかしら?」
「イエ。ナニモイッテマセンヨ?」
相変わらず不用意な発言が多い友人に呆れながら、丁度四阿の近くに来たので皆をそこへと誘う蒐一。全員が腰を下ろして寛いだところを見計らって、徐に不満をぶちまける。
「僕、三人に言いたい事があるんだけど」
蒐一が不平不満を表明するのは珍しくないが、三人全員に対してというのはそうある事ではない。三人は真面目な顔で蒐一に向き合う。
「どうして僕が死霊術を使う流れなのさ!」
魂の叫びが親水公園に響き渡った。
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立て板に水の勢いで不平不満を並べ立てて難詰する蒐一を宥める事三十分、明日から三日間の奢りを約束する事で何とか蒐一の怒りを静め、陳謝とともに弁明に回る三人。
「いや、一応は理由があってだな」
「理由?」
「蒐君、もう死霊術持ってるんだから、ケチケチしなくても……むぐっ!?」
蒐一が再びムクムクと眉間に黒雲を湧き上がらせかけたところで、慌てた匠が茜の口を塞ぎ、流れるように要が弁解役を交代する。見事なチームワークである。
「説明、代わるわね。問題はパーティ枠なのよ」
「……パーティ枠?」
「えぇ。SROでは一パーティの人数が六人までに制限されているのは知ってるわね?」
「あー……そういえば読んだ憶えがあるような……関係無いから忘れてた」
蒐一の哀しげなカミングアウトに不覚にも涙を零しそうになるが、ぐっと堪えて話を続ける。
「私たち『ワイルドフラワー』は五人パーティ。で、問題なのは、従魔もパーティ枠にカウントされるのよ」
「……え? それじゃ、一体しか使役できないじゃん」
召喚術で随時呼び出す召喚獣と違い、従魔は常に従魔術師と行動をともにする。必然的にパーティ枠を一つ食い潰す事になるのである。「ワイルドフラワー」の三人が従魔術を取得しても、使役できるのは一体だけ。蒐一が訝るのも無理はない。
「そこはユニオン編成で乗り切るつもり」
「ユニオン?」
「二つ以上のパーティが協同する集団の事ね」
「従魔と使役者で一パーティって事?」
「そう。とはいえ、できるだけ枠は使い潰したくないのよ。従魔だけでパーティを組む事はできないから」
不用意にアンデッドモンスターを仲間にしたくないって事かな? でも……
「だったら、死霊術を取得した後で契約解除すればいいじゃん」
「それはカルマが怖いのよ」
カルマの意味が解らずに困惑している蒐一に対して、匠が説明を買って出る。
「蒐、カルマってのは……簡単に言えば不人気度みたいなもんだ」
「へ? そんなの、設定されてたっけ?」
「あるんじゃないかって言われてる。数値として公開はされてないけどな」
SRO内での行動によって人気不人気の度合いが変動し、不人気度が高まると住人の対応が素っ気なくなったり、冒険者ギルドから旨味のある依頼を回して貰えなくなったりする……のではないかという。
「数値として公表されてないから、不人気度を便宜的にカルマって呼んでる訳だ。好感度のマイナス値で表現する事もあるけどな」
「へぇ……って、それとこれとどういう関係があるのさ?」
「あのね、蒐君、拾った生き物をすぐに捨てて、好意的な評価が得られると思う?」
……え?