表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/877

第四十三章 ナンの町 2.「マックス」(その1)

 シュウイが墓掘りに勤しみ、「ワイルドフラワー」が住民(NPC)従魔術師(テイマー)との出会いを目前に控えている頃、タクマの所属するパーティ「マックス」の面々は、ナンの町の冒険者ギルドへ向かっていた。いつものように討伐依頼を受注するためではない。今回、彼らは二つの(もく)論見(ろみ)を抱いて冒険者ギルドへ――正確には冒険者ギルドにある訓練場へと向かっていた。


 第一の目的は住人(NPC)との交流を深める、あるいは広げる事。リアルで(かなめ)たちと検討した内容を持ち帰ったタクマが、パーティメンバーと協議した結果、これまでにプレイヤーが関わってこなかった住人(NPC)と接触してみてはどうかという話になった。冒険者ギルドにはほぼ全てのプレイヤーが訪れるが、ギルドの職員との会話は事務的なものになりがちである。また、最初の町であるトンの町では訓練場を使用するプレイヤーもそこそこいるが、ナンの町に来てまで訓練場を訪れる者はほとんどいない。そんな暇があるならクエストの消化やレベル上げに邁進(まいしん)するのが攻略組である。



「……とはいえ、このところ行き詰まっていたのは事実だからな」

「タクマが持ち帰った提案は、案外と突破口になるかもな」



 どれだけフィールドでモンスターを狩っても一向に次の町へのルートが開かれない事にうんざりしていたメンバーは、半ば息抜きも兼ねて、タクマの提案に乗る事にしたというのが実情であった。



「それに、タクマのリア友の言う事が本当なら、隠しクエストの可能性もあるし」

「そうでなくても、スキルアップの可能性がある。やってみて損は無いしな」



 ギルドの訓練場にやってきたもう一つの目的。それは何の気無しにシュウイが漏らした一言が切っ掛けになっていた。



『冒険者ギルドの指導係の人は、住人(NPC)異邦人(プレイヤー)で教え方を変えてるって言ってたよ』



 冒険者ギルドの訓練場で弓術の指導係からシュウイが聞き出した一言。それはつまり、自分たちプレイヤーが知らない技術を住人(NPC)が知っている事を暗示していた。上手く話が転んだら、指導係に教えを受けるというクエストが発生するかもしれない。そうでなくても、教育係の指導を受ける事で、自分たちの()(りょう)が上がるかもしれない。それがタクマの所属するパーティ「マックス」の目的であった。



・・・・・・・・



「訓練場を使わせてもらっても構わないか?」

「ほう? 異邦人にしちゃ珍しいな」



 ギルド職員との問答で、今までのプレイヤーが訓練場を使用していない事を察したタクマたち。



(たま)には初心に立ち返って基本の稽古をしないとね。変な癖が付く前に」

「おう、良い心懸けじゃねぇか。係の者が暇そうにしてたし、ちっとばかり見てもらうが良いぜ」



 職員と言葉を交わし、それぞれ――今回はリーダーで剣士のサント、サブリーダーで双剣使いのタクマ、魔術師のマギルの三人――が希望する訓練内容の申請を済ませてから訓練場に向かう「マックス」のメンバーたち。



「……クエスト、まだ始まってないよな?」

「条件を満たしていないか、見込み違いか……」

「まぁ、会話からみて訓練場に行く事は間違いじゃないみたいだし、とりあえず行ってみよう」



 「マックス」の面々は訓練場の扉を開いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ