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第三十八章 篠ノ目学園高校(月曜日) 2.昼休み~食堂~

 生憎(あいにく)と今日は雨模様なので屋上での昼食会は中止、食堂で弁当を使う事にした。今日は(かなめ)ちゃんも参加しているけど、話題はやっぱり文化祭の事になった。


「あ、(かなめ)ちゃんのクラスは不参加なんだ」

「えぇ。ほとんど決を採る必要もなかったわね。何かやりたい事がある人はいますか、返事無し、では不参加、って、流れるように決まったわよ」

「わぁ……」

「今風の高校生らしいっちゅうか、何というか」

「どっちみち私は参加できないしね」

「あれ? 図書委員会って、文化祭で何か仕事があるの?」

「活動内容の発表みたいな事をやるのよ。あとは、文化祭の期間中は図書室を開放するから、交代でそこに詰めなきゃならないし」

「へぇ……意外だね」

「活動内容の報告って、来室者数とか、購入した本とかの報告か?」

「あとは、本の補修技術の実演ね」

「補修?」

「技術?」

「実演?」


 物問いたげな顔の僕たちに、(かなめ)ちゃんが説明してくれる。


「この学校の図書委員、かなり専門的な本の補修技術を受け継いでいるのよ。それこそ、傷んだ革装幀(かわそうてい)の表紙を外して、新しい革で装幀(そうてい)し直したり、金箔で題字を打ち直すような事も」

「え……」

「マジかよ……」


 うん。これは吃驚(びっくり)だね。


「それって、当日実演すんのか?」

「時間は決まってるの?」

「絶対見に行く!」

「言っておくけど、私たち一年生は実演なんかできないからね?」

「それでも見たい!」

「まぁ……見ておいて損はないしな」

「うん。ひょっとしてSRO(スロウ)の中でスキルを覚えるかもしれないしね」


 僕がそう言うと、(たくみ)は疑わしそうな顔付きだった。


「いや……SRO(スロウ)にそんな技術は出てこないだろ?」

「判んないよ? 古くなって傷んだ魔法書を修繕するクエストとかさぁ?」

「マジかよ……」

「あの運営だものね……」

「あ、でも、魔法書の補修って手作業でやるのかな? 何か魔法を使わないと修繕できないような気がしない?」

「そのクエストに参加する条件が、手作業で本の補修ができる事、なんてのは?」

「……ありそうな話ね。どっちみち覚えなきゃならないんだし、少し身を入れて習う事にしようかしら」


 うん。手に職を持ってると心強いしね。


 そんな事を考えていると、(たくみ)のやつが考え考え声をかけてきた。


「……なぁ、(しゅう)。こないだも話したNPCとの交流な、何か技術を持ってるか、知識として知ってる事が解放のキーになるって事も……」

「あ~……」

「ありそうよね……」


 うん。言われてみれば僕の弟子入りクエストもそうだったしね。


「あぁ、確かに(しゅう)君の、(くす)()弟子入りクエストっていう実例があったわね」



 (たくみ)が気付いて指摘した事は正しい。SRO(スロウ)では、一部のNPCから情報やスキルを貰う、あるいはクエストへの参加を認められるためには、プレイヤーが関連するスキルあるいは知識を持っている事が必要条件となっていた。というより、知識や技術のない者はそういう会話の流れに乗れないため、ストーリーが進んでいかないというのが実情なのであるが。



「案外さぁ、想像もしないような技術や知識がキーになってたりしてね」

「……例えばどんなんだよ?」

「え? ……う~ん、薪割りとか、炭焼きとか、裁縫とか、料理とか……」

「そんなん知ってる男子高校生なんかいねぇよ……」

「リアルでお母さんのお手伝いをして覚えなきゃいけないとか?」

「あ~……(あかね)ちゃんの言う通りかも……」

「あの運営だものねぇ……」



 予鈴が鳴ったので、僕たちは各々の教室へと向かった。

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[一言] >>食堂で弁当を使う事にした。
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