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第三十七章 トンの町 1.依頼の受注

 オークキング討伐戦の翌朝、僕は冒険者ギルドを訪れていた。ギルドマスターに呼ばれて来たんだけど……入った途端に、何、この妙な雰囲気。ギルド内にいた冒険者が揃って視線を外すんだけど……目が合ったら因縁つけられるとでも思っているのかな。……うん、良いんだ、僕にはシルがいるし。



 幸か不幸か、シュウイが理不尽な(いじ)め――本人視点――に耐えている時間は短く、すぐにギルドマスター室へと案内された。



「おお、朝早くから悪いな」

「いえ。何か用件がおありなら早めに伺っておいた方が良いと思いまして」

「ああ、用と言っても大した事じゃねぇ。お(めえ)さんの昇級の事だ」



 ギルドマスターが言うには、防衛戦での貢献に鑑みてシュウイを昇級させたいが、現在F級のシュウイがE級に上がるには、依頼者から満足のいく評価を受ける必要がある。ところが、これまでシュウイはギルドの常時依頼である薬草採取しか受注しておらず、一般の依頼者からの評価という項目が評定されていないため、このままで昇級させにくい。なので、適当な依頼を達成して評点を稼ぐようにとの事だった。



「あ~……納品依頼じゃ駄目なんですね?」

「まぁな。ギルドとしちゃあ戦闘能力以外の部分も評定せにゃならんのでな」

「交渉能力や依頼の条件を遵守するかどうか、などですか?」

「そういうこった。今までお(めえ)さんが受けたのは、常時買い取りの薬草採取だけ。これじゃあギルド(うち)としても評価ができん。曖昧な評価のまま新人(ノービス)を次の町に送るようじゃ、トンの町(ここ)の冒険者ギルドとしての能力や責任を問われるんでな」


 成る程なぁ……僕の事情が事情だけにレベルアップに励んできたんだけど……冒険者としての義務を果たしていなかったかぁ……。いつまでもF級に甘んじている(わけ)にもいかないし……ここは依頼を受けておくべきだね。


「解りました。けど、どんな依頼を受けたら良いんでしょうか?」


 そう()いてみたら、ギルドマスターは手元に置いていた依頼票の束を僕に渡した。前もって選んでおいてくれたのかな?


「こん中から適当に三つほど選んで受けてくれりゃあ助かる」


 え~と……畑の開墾、廃屋の解体……って、一人でやる仕事じゃないような……あぁ、複数名の募集かぁ……。さっきの皆の対応を見る限り、他の冒険者と一緒の依頼は外した方が良さそうだなぁ……。教会の補修は……これなら大丈夫かな。他には……水()み?


「あの、この水()みっていうのは……?」

「ん? あぁ、こいつぁ錬金術師からの依頼だな。作業に使う綺麗な水を()んで来いってんだろ」

「わざわざ依頼を出すって事は、簡単な場所じゃないんですね?」

「あぁ、北の草原の奥にある泉からってあるな。まぁ、お(めえ)さんなら屁の河童だろ。これにするか?」

「あ、はい。あとは教会の修繕と……庭木の剪定? こんな依頼もあるんですか?」

「あぁ、そいつぁ領主の屋敷の庭師からの依頼だな。ご領主がこっちへ来る前に庭木を剪定しなきゃならねぇってんで、結構急ぎだな」

 急ぎねぇ……。


「明日からで良いんなら受けますけど。今日はちょっと用事があるので」

「どれ……あぁ、問題ねぇな。じゃあ、その三つか? ギルド(うち)としちゃあ他の冒険者との共同作業も見ときてぇんだがな」

「さっき待合室で、他の冒険者の方々が微妙な雰囲気だったんですよ……」

「あ~……無理もねぇか……。んじゃ、この三つで処理しとくわ」



 無理もないって……どういう意味なの? ねぇ?

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[一言] PvPで冒険者解体やったでしょw
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