第三章 トンの町 5.攻略パーティ「黙示録(アポカリプス)」(その2)
本日更新分の最後です。
攻略パーティ「黙示録」は、その日、空前の盛り上がりを見せていた。このゲームではパーティは六人までとなっているので、空き枠に臨時メンバーとしてシュウイが入っている。
「ひゃっはー! マーブルボアの背骨なんてドロップ、初めて見たぜ!」
「レア度7!? そんなものがあるなんて……」
「おおっ! レッドタイガーの毛皮が二枚も!」
「それも特大サイズだぞ!?」
「嘘だろう……こりゃ、掲示板が荒れるぞ」
「くれぐれも言っておくが、シュウイ少年の事は極秘だからな」
「解ってるわよ」
「……ねぇ、シュウイ君、さっきゴブリンキングが盛大にすっ転んだのって……」
「あ、僕のスキルです。【土転び】っていう」
「変なスキルばかり持ってんな……」
「いや、それよりも、ドロップ品は何だい?」
「え~と……あ、『ゴブリンキングの睾丸』『ゴブリンキングの肝臓』『ゴブリンキングの尿道結石』『ゴブリンキングの胆石』の四つみたいです」
「尿道結石って……初耳なんだけど……」
「椀飯振る舞いにも程があるだろう……」
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日が暮れかかろうとする頃、攻略パーティ「黙示録」のメンバーは、深刻な表情で頭を抱えていた。
どうやっても言い抜けできないほどの、レア素材の山を前にして。
「参ったわね……つい、調子に乗り過ぎたわ……」
「どうするよ……これ」
「捨てていく訳にもいかんだろう……持ち帰るしかない」
「持ち帰った時点で大騒ぎだぞ? 到底シュウイ少年の事を隠しきれない」
「あの……隠しておいて小出しに換金すれば?」
「現実的にはそれしかないだろうが……」
「それでも、レア素材を立て続けに持ち込めば注意を引くわよね……」
「別の町に持って行って換金するのは駄目ですか?」
シュウイの提案に考え込む「黙示録」の面々。
「……そうだな。それなら多少は誤魔化せるかも知れん」
「エレミヤのアイテムボックスにしまい込んでおけば劣化はしないし、隠してもおけるよな」
「ここでは今日と明日の二回に分けて換金して、それからナンの町へ出かけよう」
「それで……シュウイ君、できたら君にも同行してもらいたいんだが」
「僕ですか?」
「そりゃ、何たってこのドロップ品を稼いだ立役者だし」
「売却益を君を含めた全員で分配しようかと思っていたんだが、とてもじゃないが、こんな高級品の代金を立て替えるほどの持ち合わせがないのだよ」
「できたら一緒に行って欲しいんだけど……どうかしら?」
「君のスキルってやつにも興味があるしね」
「エレミヤ、他人のスキルを探るのはマナー違反だぞ」
「いや、言ってみただけだって」
シュウイは考える。どうせいつまでもこのスキル、「スキルコレクター」の事を隠しおおせるとは思えない。ならば、信用のおけそうなこの人たちに相談に乗ってもらうのがいいかもしれない……。
「解りました。ご迷惑でなければ連れて行って下さい」
そう答えると、ケインは明らかにほっとした様子で……
「それでは明日、冒険者ギルドで会おう。そこで用事を済ませてから、ナンの町へ向かうので、準備をしておいてくれ」
「はい。よろしくお願いします」
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《シュウイのスキル一覧》
レベル:種族レベル2
スキル:【しゃっくり Lv1】【地味 Lv2】【迷子 Lv1】【腹話術 Lv2】【解体 Lv4】【落とし物 Lv5】【べとべとさん Lv2】【虫の知らせ Lv1】【嗅覚強化 Lv1】【気配察知 Lv1】【土転び Lv1】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv2】
明日も三話ほど更新の予定です。その後は週一話程度のペースで更新する予定です。