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第三十四章 トンの町防衛戦 2.戦闘正面

本日二話目です。

 トンの町から北西に進んだ位置の草原。冒険者たち全員の配置が完了した事を確認すると、ギルドマスターが合図を送る。と、やがて(かがり)()()べられたトリファというキノコが奇妙な臭いをたてて燃え始める。風魔法持ちがその臭いを草原の奥、森林にほど近い方向へと送り込む。



「……しかし、トリファか。初めて聞く話だな」

「プレイヤーに開示されていない情報って、結構あるみたいね」

(そもそも)このイベント自体、他のプレイヤーに開示されなかったかもしれないしな」

「シュウのやつが関わってくれたから、クエストになったんじゃねぇか?」

「その可能性は否定できんな」



 運営側の悪辣(あくらつ)さに想いを馳せる「黙示録(アポカリプス)」の面々。しかしその運営側が、シュウイの容赦無さに泣きそうになっているのを知ったらどう思うだろうか。



「ま、とにかく俺たちゃ自分の仕事をこなすだけだ……来たぜ」



壁役のダニエルがそう言って盾を構えるが……



「何か……目の焦点が合ってねぇな……」

「……取り憑かれたみたいに(かがり)()に吸い寄せられて行くね……」

「……アレを攻撃するのか……?」

「罪悪感が……っていうか、勝手に攻撃して良いの?」

「もう少し引きつけて、一網打尽にするのかもしれん。少し様子を見よう」



 「黙示録(アポカリプス)」の面々がそう話しているところへ、状況を()(かん)していたギルドマスターから号令が飛ぶ。



「よし、かかれっ!」



 号令一下、冒険者たちがオークに攻撃を仕掛ける。「黙示録(アポカリプス)」も後れじとばかりに攻撃していく。攻撃を受けたオークは断末魔の叫びを上げるが……仲間のオークがそれに気をとられる様子はない。魂を抜かれたように(かがり)()に吸い寄せられて行く。


 (たお)したオークの屍体を片付ける暇も無く、次から次へとオークが湧いて出る様子に、思わずケインが()(ただ)す。



「ギルドマスター、屍体を放っておいて大丈夫なんですか? いくら何でもオークたちが警戒するんじゃ……?」

「あぁ? ……お(めえ)さんたちゃ知らねぇのか? トリファの煙を嗅いだオークにそんな知恵は残ってねぇよ。何かありゃ、火に()べるトリファの量を多くすりゃ良いこった。それより、そろそろ本番だ。しっかり頼むぜ」



 本番とはどういう事かとケインが()こうとしたところへ、解答が向こうからやって来る。



「オークだ! 凄ぇ数だぞ!」

「手を休めるな! 片っ端から始末しろ!」



 二百どころか三百に届きそうなオークが、森から群れをなして湧き出して来る。



「……なんか、ゾンビの大群みてぇだな」

「やめてよ。想像しちゃうじゃない」



 遠くから攻撃を受けて倒れたオークも、やがて立ち上がるとふらふらと歩き出す。その(さま)は確かにゾンビに見えなくもない。



 ほとんど流れ作業とはいえ、膨大な数のオークを(たお)さねばならない冒険者側にゆとりはない。弓を持っている者は弓で、投石紐(スリング)を持っている者は投石紐(スリング)で、遠間からオークに攻撃を仕掛けていく。(たお)すためではなく、少しでも時間を稼ぐために。何人かはボーラを使っているようだ。



「……ナントのやつが熱心に薦めるから使わせてみたが……結構便利な道具だな。遠間から脚を絡め取るのは難しいみてぇだが……」



 ギルドマスターが(つぶや)いた様子を見ると、ボーラの普及を狙うナントの(たくら)みは、一歩実現に近づいたようである。

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