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第三十一章 トンの町 2.ホブゴブリン

本日二話目です。

 冒険者ギルドで用事を済ませた後で、僕とシルは北のフィールドにやって来ている。ホブゴブリンたちに会って、明日の討伐戦の打ち合わせをするためだ。彼らの居所は探知系のスキルを重ね掛けすれば判るから、その方向に歩いて行けば良い。途中出会うモンスターはおまけだよね。……あ、居た。


「お~いぃ」


 ホブゴブリンたちを見つけたので、手を振って合図をすると、向こうも手を振って応えてくれた。


「来たか、人間」

「うん、来たよ」


 ごく簡単な挨拶(あいさつ)を交わした後で、明日の討伐戦の打ち合わせに入る。


「冒険者たちの主力は西の門――この地図でいうとここだね――から出て北に進み、この草原に陣取るみたい。トリファっていうキノコを焼いた煙でおびき寄せるつもりらしいけど、トリファって知ってる?」


 念のためにギルドで貰ってきた欠片(かけら)を見せて確認すると、ホブゴブリンたちも――呼び名は違うけど――知っていた。ホブゴブリンたちは、煙に影響される事は無いそうだ。


「僕らは一応反対側に陣取って、冒険者たちが討ち漏らしたオークを片付ける事になってるけど……それで好い?」

「ふむ……ならば我々は数名ずつの班に分かれて待ち伏せた方が好いか……」

「確実を期すならそうかもね。オークの混乱に乗じて後ろから突っ込んでも好いと思うんだけど……」

「……いや、やはり()(こぼ)しが無いようにしたい。突撃よりも待ち伏せの方が効果が高いだろう」

 見かけによらず慎重派だなぁ……。


「解った。じゃあそうするけど……武器は何を使うつもり?」

「昨日も見ていたから知っているだろうが……魔法攻撃が中心になるな。我々の体力ではオークには通じん。それに、金属の武器を持つと魔力が乱れるしな」

 あ……金属の装備ペナルティはホブゴブリンも同じなんだ。だったら……


「これは使えない?」


 僕がアイテムバッグから取り出したのは、オークが持っていた槍だ。金属ではなくカマキリの鎌を使ってるしね、これならペナルティには引っかからないんじゃないかな。


「オークの槍か。使えるのは使えるが、我々の(りょ)(りょく)ではオークの皮を(つらぬ)けん」

 あ~……筋力値が足りないか……


「なら、これは? 昨日僕が使ってたのを見たよね?」


 今度見せたのは投石紐(スリング)だ。意外にもホブゴブリンたちはこの道具の事を知っていたし、有効性も認めていたんだけど……


「当たらない?」

「あぁ。恥ずかしながら、どういうわけか我々の部族には不器用な者が多くてな……勢い良く届くのは届くんだが……的はきっちり外れる」

 自慢にならないよね……


「お前は何をそこまで気にしている?」

「うん。魔法の威力は解ってるけど、昨日も詠唱の隙を()かれて隊形を崩されてたじゃん? たとえ牽制程度でも、詠唱と詠唱の間を埋める攻撃手段があれば、(ほころ)びが無くなるよね?」

「ふむ……」


 魔法の威力は大きいけど、詠唱に時間がかかる。その穴を埋めるために必要なのは、威力じゃなくて即応性だ。目潰しや毒液、毒煙、火炎瓶なんかを列挙していくと、ホブゴブリンのリーダーは考え込んだ。


「ちなみに、人間、お前は何を使っている?」

「僕? いつも手にしているこの杖かなぁ」

「杖でオークと渡り合うと?」


 おや? 失笑しているみたいだね。それなら杖の怖さを教えてあげなきゃね。



・・・・・・・・



 ……二十分後、シュウイの周りには(わけ)が解らないといった表情で(くずお)れ、へたり込んだホブゴブリンの一団があった。



「まぁ、ここまでの域に達するにはそれなりの稽古が必要だけどさ、オークの一撃を()なしたり(かわ)したりするだけでも牽制にはなるし、普段から手に持ってる杖なら即座に振れるよね?」



 半ば心が折られたようなホブゴブリンのリーダーであったが、それでも気力を振り絞ってシュウイに答える。



「……確かにな。明日の決戦には間に合わんかもしれんが、我らにとっても使える技術には違いない。……厚かましいようだが、人間よ、杖の技を教えてもらえぬか? 無論、それなりの礼はさせてもらう」

「うん、いいよ」


 このホブゴブリンたちは他人のような感じがしないしね。基本的な技だけでも教えておこう。



 ホブゴブリンたちの熱意もあって、シュウイによる杖術指南は昼食を挟んで夕方まで続いた。その甲斐あってか、基本的な構えと打突、受け、払い、体捌(たいさば)きなどの形程度は身に付ける事ができたようだった。



「後は反復練習かな。自分だけじゃ判らないだろうから、必ず他人に見てもらって、姿勢が崩れていないかどうか確認してね」

「感謝する……人間よ、名は何という?」

「? シュウイだよ」

「そうか。我の名はガワンという。何かあったら来るが良い。我らは友を歓迎する」



 ホブゴブリンのリーダーであるガワンがそう言うと同時に電子音が響き、空中にウインドウが表示される。



《ホブゴブリンの(ゆう)()を得ました》


《称号『ホブゴブリンの友』を得ました。以後、ホブゴブリンの好感度が上昇し、様々な便宜を図ってもらえるようになります》



 シュウイが軽く驚いていると、ガワンは(おもむろ)に二つの宝珠(オーブ)を取り出した。



「約束の品だ。きっとお前の力になるだろう。受け取ってくれ」



《ホブゴブリンからの謝礼としてスキルオーブを得ました》


《アーツ【土魔法(ホブゴブリン)】および【水魔法(ホブゴブリン)】を取得しました》



「うん、ありがとう、ガワン」



 ()(まぐ)るしく急展開して行く事態に何とか追いついたシュウイが、心からガワンに礼を言うと、ガワンはにやりと笑って(うなず)いた。



「では、明日な」

「うん、明日」



 明日の共闘を約して、シュウイはその場を辞した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 運営陣は悶えまくってそうだなw
[一言] ああ……これは……もう止められない流れ……
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