第三十一章 トンの町 1.冒険者ギルド
ログインした僕は、朝食を摂った後で冒険者ギルドに向かった。明日に迫ったオークキング討伐戦の予定に変化があったかどうかを確かめる必要があるからね。
【火魔法(オーク)】の事は気になるけど、下手に誰かに相談する訳にもいかないし……。しばらく棚上げにしておこう。
「今日は~」
「あらシュウイ君、いらっしゃい。ギルドマスターが呼んでるわよ?」
「えっ!? 今来たばかりなのに……予知能力か何か持ってるんですか?」
「あら、いやだ、違うわよ。シュウイ君が来たらギルドマスター室に来させるようにってお達しがあったのよ」
あぁ……なんだ、そういう事か。本気で驚いちゃったよ。まぁ、呼ばれているんなら行くだけだよね。
「失礼しま~す」
「おお、来たか。入んな」
渋い声で入室許可が出たので入る。……いいなぁ。僕の声、男にしては少し高めなんだよね。
「早速だが、これが明日の計画になる。オークどもの居場所はここだ。時間割を間違えるなよ? 一部渡すから、お前さんのホブゴブリンたちにもしっかり伝えてくれよ?」
「主力の頭数は揃ったんですか?」
「安心しな。何とかなりそうだ。寧ろ、逃げたやつを取り零さねぇようにする方が面倒かもしれねぇ」
「反対側には僕たちが布陣していますから……。それより、どうやってオークたちをおびき寄せるのか聞かせてもらっても?」
「あぁ。『異邦人』のお前さんは知らねぇかもしれんが、オークのやつらをおびき寄せるにゃあ、昔っからトリファの煙って決まっててな」
おぉ……またしても未知の情報だ。
「トリファ……ですか?」
「あぁ、土の中に生えるキノコの一種でな。オークのやつら、これを火にくべた煙を嗅ぐと、ふらふらぁ~っと寄って来やがる。数を揃えるのがちぃっと面倒だったが……ナントのやつが頑張ってくれてな。どうにか目処が立った」
……トリュフの事かな? そういえば、トリュフの臭いは豚の臭いだか性フェロモンだかに似て……あれ? 確かトリュフの臭いは、雄豚の臭いに似ているから、雌豚に探させるんじゃなかったっけ……。SROでは逆なのかな……それとも、SROのオークは全部雌……な訳ないよね。
……いいや、深く考えるのはよそう。それよりも……
「そのトリファの臭い、ですか? ホブゴブリンに影響は無いんでしょうね?」
「……知らねぇよ」
まぁ、そうだろうね。だったら……
「……少し分けてもらえますか? 確かめないといけないので」
「……なるべくなら減らしたくねぇんだが……仕方無ぇか……」
「援軍が使えるかどうかの瀬戸際ですから、そこは諦めて下さい。それと……このトリファって、食用じゃないんですか?」
現実のトリュフは昔から高級食材として知られていたんだけど、SROでは違うのかな?
「あぁ? オークの臭いのするものなんか、誰が食うもんかよ」
そうなるのかぁ……。
少し短いので、もう一話投稿します。